#3 石礫(いしつぶて)の女

どっちかというと多分、彼女と関わった男が死んでしまうというより。
むしろ彼女の腕がやたらと突出していた上に(だって男と渡り合えるじゃん、しかも複数)、美形で妙齢の女性ということもあって生き残っていたにすぎないんじゃないかというか、世が荒れて、前の時代のアウトローである山賊盗賊の生きる場所が自然に減りつつあった時代なのかもなぁ、と見ながら思っていたんですが。
しかし、初めて堅気の男と知り合ったらば、その人がよりにもよって新撰組に入ってしまい、彼女に吊り合うような男になりたかったのかねぇ、酒の上の言い合いで斬り殺されてしまったらばそんなふうに嘆く気持ちもわからんでもない。
それにしてもその人に対しての鞍馬天狗さんの言葉が、「尼になれ」だった時はさすがになんかこう、芯からびっくりしました、なんて言ったらいいんだろう、そうかそんな手が! と純粋に思ったともいえるし、ある意味で時代錯誤というか、でも時代劇なんだから当然じゃん、と思ったりとかそんな気持ちが入り混じったいろいろです。
いや確かに、それなら生活の術も立つし、心から平和な生活望んでいたし。


ある日、倉田さんがいとこの女の子とお祭りを覗いていましたところ。
長州様にご伝言は? と聞いてくる美女が、なんのことだかわからない、と倉田さんが言うと立ち去って行ったわけですが、またそれなりの雰囲気のある相手に声を掛け、というのは正直わりといい手だなー、相手間違いとかなさそうだし違ってもそれまでだし。
なんでも新撰組の間諜、石つぶてを武器とする隊士の恋人(情婦って書いちゃったけど、恋人だよな、これ)。彼女がなまじ凄腕の美人なもんで、やっかみ受けちゃったり。
んでも人間の業みたいなものからは逃れられなかったねぇ、という話なのか。