『美の巨人たち』ボッティチェリ「春(プリマベーラ)」

あの馬鹿っ高そうな香水店のインパクトにいまいち気を取られてしまい掛けましたが。
(しかし褒めたら笑い流されそうな勢いだ、「高そうですね!」と褒めてみよう)(←褒め言葉にもうちょっとでいいからセンスないんですか、てかそれ褒めてるんですか?)


お気に入りの画家を「蝿」呼ばわりして嫌味のない君主さまってすげー。。。
どんな政治をしていたのかとかはほとんど出てこず、なんつーのか芸術家たちのパトロンだったんだよん♪ で済んでいた気もしますが、それでなんとなくでも見当が付くというか濃い人だよなぁ。
ちなみにこのボッティチェリさん。
経歴が謎というか、ある時期まで彫金をやってたと思ったら気付いたらメディチ家のお抱え絵師になっていたというわけのわからん方だそーです。


あー、どっかでロレンツォ様(なぜその敬称)にお持ち帰りされたんじゃないでしょうか、ということを思ったんですが、色気がありません、いやあっても困りますが。んー、でも間に人を立てて取り立ててもらったのならその人物に絡むエピソードがありそうなものだし、自分で売り込みに行ったのならそれこそサクセス・ストーリーとして語られまくりそうなものだしなぁ。
や、この人本人に語る、というか歴史に内実を残す術がなくても人が語りついでいればそれは自然と残るわけで、となるとやっぱり。
あっけなく、あまり面白くもない途中経過だったんじゃないのかとは思うんですが。
あと偶然とかな。それもいいな。




てか、この人の作品有名だなー!
なんだよ、西洋美術なんて教科書レベル(+最近その手の番組、つーか主にこれかNHK)(前知識はありません、マジ、あるのは宗教関係の知識だけ)でしかない私が数割知ってるって相当のものじゃねーかよ、名前は存じてませんでしたが。
あ、いや、聞いたことくらいはあるかな?
しかし≪ヴィーナスの誕生≫知らない人はまずいないわな、あれは下手をするとCMなんかでもかなりよく見るし(パロディ含め)。


Wikipediaサンドロ・ボッティチェッリ


つーか、アレクサンドロ(綴り見てると確かにアレッサンドロだけど;)をサンドロで区切った意味はなんですか一体。なんか座りが悪いというか落ち着かないよー。
いやしかし奇麗な絵だよな。
才能がどうとか芸術がどうとかあんまり関係無しに単に奇麗、そして今回の一枚である≪春(プリマヴェーラ)≫ですが、一人ずつ見てる時には春の女神にちょっと違和感あったけど全体をじっくり見てるとそうでもないな。
ちゃんと調和してる。


いや、近くで見るとちょっとやつれてるというか、憂いありげな人間味があったんですが、全体的に見ると「今は私が責任者よー」てな感じに見えてちょっとよさげ。
そうだね、君の番だ。


ただ、この春の女神は、彼の主のロレンツォさんの弟さんの恋人だったそうで。


なんていうんだろうなぁ、権力者であり、自分の主でもある、という以外に、上手く表現出来るかわからないんですが「その時代の美しいもの」を代表していたような気がするんだよね。外見だけでなくて、特にぎすぎすどろどろしたものに関らなくても済むというか。
安全圏というか、半ば聖域というか。
マスコットだとか、旗印って言うと少し現実味が出てきますが。




そしてその弟君は暗殺され、街一番の美形だった恋人は病で儚くなります。


そこで「美しいもの」として完成されて、ボッティチェリに、そうでなくても人々の心に否応なく刻み込まれてしまったんじゃないか。そのまま、その良かった時代が幕を下ろしても過ぎ去ってしまっても、ああ、しょうがないことなんだ、と納得がいってしまったんじゃないかって気がしてならないんですよ。


いくら美形でも、絵に現実の人間を神として描いたら、多少なりと反発が起こりそうなのにしかし彼女の人生を知ってしまうとそんなことは到底思えない。ああそうか、春として存在していて去ってしまったんだな、というふうに納得できなくもない。




絵の中の、春を迎える神々の足元は現実のその地の花で満ち溢れているそうです。
等身大に人間が描かれるくらいの大きな大きな絵に、実物と全く同じ大きさで描かれた、特別でもなんでもないそこらにある草花。日本でも近い種のものが道端で見れるものすらあります、ある意味で素朴な絵。
しかし別の意味で、残されることがわかりきっていて、どれだけの労力と経費が注ぎ込まれてるんだかよーわからんという傲慢でもある絵。


でも、明らかに美しいし、時代を越える価値はあります。
その絵にまつわるエピソードと共にね。