『美の巨人たち』平櫛田中「鏡獅子」

ひらくし・たなかと至極ナチュラルに読んだ挙げ句。
あー、美保純とかそんな系統(多少年齢行った男性陣が昔お世話になったという女優さん)(前半の説明いらねぇよ)の名前よね、と納得しました。
どっから謝っていいかよくわかりませんが、ひらくし・でんちゅうだそうです。


Wikipedia平櫛田中


ところでなにがどうって、あの材木問屋のロマンス・グレーのインテリ風味が、口を開いたら完璧なべらんめぇ口調で、おまけに妙に声が若いもんだから、目を閉じるとうっかりアニメ化なんかに聞こえないでもないんですが。
あれでリアルだってんだから恐れ入る。
ちょっとわざとらしさがあるよーな気もしないでもなかったんですが、しかしテレビで素人がいきなり普通に喋ることのほうが難しいのでイーブンイーブン。


しかしなんで眼鏡のインテリなのだ、材木商!


ということを本気で語り倒して終るのはいくらなんでもアレですので、本筋から離れてるとか言うより本筋に触れてないので(まだ何者かも書いてない)、まあこの辺にしておいてやらぁ、という気分なのですが。
その材木商、ちらっと平櫛のおっちゃんが晩年に買った木材見て。


スーパーカー買えるねぇ、こりゃ、軽く買える、俺なら断然こっちだね」などということをのたまっていただけで以降出番はありませんでした。いや、平櫛さんが実際に使ってた材木屋の子孫だってわりになんだそりゃ。
(祖先の客なんて聞いてなきゃ知りませんがな。)
なんかもうちょっと使い出があったというか、別に出てくる必要がなかったんじゃねぇのかということをむしろ仄かに思うわけですが。




いや違った、晩年じゃなくて百歳越えてから「向こう三十年使えるだけの材木くれや」と言って買ってったそうです。別個にその時々にいい木を買えばいいんじゃ? というか、そんないかにも丸々取っておくのがよさげな木じゃなくてもいい気はしますが。


というわけで、えーと、木彫り職人です。
木彫り職人でいいの? 呼称? Wiki君を見ても“名誉市民”とか書いてあるしでまるでわかんねぇ、あ、ごめんなさい、間違えた、彫刻家だそーですよ。
なんか木彫り職人と言ったほうが仄かに嬉しがってもらえそうな気もしないでもないんですが、まあ結局同じことですな、木を彫るんだしな。彫刻家っていうとなんとなくスケールが下がる気がします、や、高尚がどうとかじゃなくてサイズっつーか大きさ。


ただまあ、木彫りと書くとそのたびに“熊”が思い浮かぶのはよくないですな。
あとところによっては金太郎(まーさかり担いだ♪)。


つーか私、ぶっちゃけそんな地位の高いっつーか、それなりに知名度のある木彫り職人の方が存在しているということもよー知りませんでした。名誉市民がどのくらいのものなのかはさっぱりわかりませんが、親戚筋にはいなかったよーな気もする。




んで、材木を「当時」売っていたという設定のじーちゃんが語るわけです。
(いつものこの番組の演出でス。)
「なんで色なんざ塗りやがるんだ」みたいな、なんというか、色を塗ると木彫りではなくなってしまうみたいなのですわ、うーん、木目みたいなものが見えなくなっちゃうみたいなことをつらつらと語っていたんですが。
なんというか、だったら別の素材でも出来るだろ、と言われたらそんな気もする。


表面をつるぴかにするつもりなら、木彫りじゃのーて下から塗り重ねて「盛り上げる」ほうがまだしも楽そうだもんね。
なんというか、これは偏見だけでなく、さすがに一回彫ったら修正が効かない、というのはわりと有名な話で、粘土とかなら作り直しが出来るわけじゃないですか。


よく考えたら、平櫛さんがどうやって造型してたのか理解してねーや。
いやだって、ほとんど語られてなかったもんですもので、西洋のほうの技法は語られてたんですけどね、モデルがあってそれをちょっとした道具と法則性で徐々に再現していくっていうかそんな感じで。


そーいや仏像師の運慶さんだかなんだかが、「埋まってるのを彫り返すだけー」と言ってる小説だったかがあったけど(夏目漱石の『夢十夜』なんだが、なんか元ネタあるんだろうか?)、もしかしてでででっ、と彫り出してって作るんでしょうか。
いや、デザイン画みたいのはありましたけどね。


自分と違う能力を持つ人らのことはいつもよくわかりません。
なんというのかこう、なんで木彫りだったのか、それなのになんで色を塗ったのか、という問いにも、当人もわかってない答えが返るような気がするんですが。


後世の人間にとっては歌舞伎の演目、鏡獅子がその答えになるんでしょう。
等身大の鏡獅子は、材木商も認めるほどに素晴らしかった、私もすごいと思った、文句なしです。