『天保異聞 妖奇士』説九 面と怨 / 説十 弥生花匂女神楽(やよいはなにおうむすめのかぐら)

面倒臭い途中経過は嫌いではないですが。


――「宰蔵」という名前が罪を含んでいる。


とかとりあえす言われても、それが正しいとか間違っているという以前に聞き流しているわけですよ、とりあえず個人的に「宰」は宗教儀式の関係だなというのは知ってるわけですが(と、最初から思ってたら面白くない、、、というかネタばらしされてもちっとも面白くなかった)、それを確かめる気すら全く起こりませんでした。
なんというのかたわ言に聞こえたもので。


でもまあ、思春期ならそのくらいはまあままあるもので。
己を卑下するというかぶっちゃけ、悲劇のヒロインぶるというか。
そーいうのの一種なのねと思ってました、もしかしたらこういうのが嵌まるお年頃というのがあるのかもしれないとようやく思い当たりましたが。一人で己を苛んで一人で突っ走って、人に救ってもらってというわりと典型例かなと。
(一人で勝手に気付いて帰ってくるのも大変に多いわけで。)




しかしだ。
そんなふうに指摘したのが、少女を指して「罪」だと言ったのが、あやしのリーダー格のお兄さんで、しかももともと宰蔵ちゃんに妖異の肉をそれと言わずに隠して食わせ、己の仲間に引き摺り込んだとなると。
さて、これは「少女の救済の話であるべきなのか」と見えるわけですよ。


ラストも、少女・宰蔵はあれでいいとしても。
なら最初から間違ったことを告げて、彼女を苦しめていたということはどうなるのかというと、別にどうもなりはしないわけで。なんでなあなあで済んでしまうかわからない。
しかもなんか救われたような顔をしているわけですよ。彼まで。


楽しいか楽しくないかで言えばちっとも楽しくない。
思春期の少女の暴走勘違いならともかく、てめぇのこと庇護してるお偉い(わけではないらしーが、ぶっちゃけユキさんの元の身分より低い)お侍に「罪人」なのだと言われたらそりゃあ鵜呑みにするでしょうよ、しかも騙まし討ちで許可も求められずに仲間に引きずり込まれたわけですよ。
その結果の果てに今回みたいなことになっても。
さて、救われたからってメデタシメデタシかっていうと。


――そもそも宰蔵ちゃん、アンタじゃないんじゃね?
としかどう考えても思えないわけですよ。


しかもなんか父ちゃんもかなりろくでもないしな、、、いや別に、自分ンとこの若衆に手ぇ付けてても悪くはないけど(ないのか)、いっくら美形でも男を胸に掻き抱いて「理想と違っちゃった娘」のことを語るのはちょっとどうよ。
せめて自分の部屋でやれ、自分の部屋で。それか外。


そして火事を知らせにきたらそんな真っ最中だったので。
放って逃げたので「父親を殺してしまった」罪悪感に苛まれている、となると、もはや思春期なんかどうでもいいわけで、勘違いとか自己陶酔とか表現すれば出来るんですが、むしろ誰がどう聞いてなにを責めた?! というレベルになってしまうという。


もうこうなると、女に生まれたから悪だ、としか言い様がない。


いやだって、能動的に彼女がやったことなんてなに一つとしてないわけじゃないですか、生まれて順調に育ったというだけのことで。まあよく考えてみると、主な反省点は「女に生まれた」ことなのでそれはそれで理に叶っていたのかもしれませんが。


書いてても思うんですが、そんな観念的な内容は面白くない。


しかもなんか取って付けたよーなお奇麗な解釈で、「宰の字は補佐、人を助ける人になって欲しいためにその名前にしたんだ!」じゃねぇよ、芝居小屋の親父にそんな教養があるかボケ、罪人がどうこうってのもどう考えても同義じゃ阿呆。
まあ、そんなのは少女が納得すればそれでいいんだけどね。
そこの理には叶ってるんだけど、そんなところを突き詰めて欲しいなんてことはやっぱりどうしても思えないわけですよ。




というわけで、すっかり忘れてたけど狐女に萌えるべきだったんだろうかこの回は。
しかしあの人ら、性格は好みだけど顔がいまいちなんだよなぁ。


まあ、芝居と面との関係なんかは結構面白かったです、結局なんだかんだと「女」は置き去りだったよーな気がしないでもないけど。
父親に否定されたってとこから始めりゃいいじゃんって思うのは気楽なんだろうか。
なんかやっぱりアレ、欺瞞だったんじゃないのかというか。


しかしやっぱり、これ作ってる人らはそれ自覚してそーな気がするんだよね。
そうでなきゃ、あそこまでろくでなしに父親設定しないだろうしなァ。。。