第六話「露を吸う群」



「蟲を安易に利用すれば報いを受ける」


というギンコの言葉は、きちんと等価に返っては来なかったように思います。
その彼は人に殺されてしまった。
そして彼の受けるべき報いは、その犠牲になっていたはずの少女と、その少女が戻ってくるのをなによりも望んでいたはずの少年が引き受けてしまったようにも思うのですよ。




今回は、少し生臭い話。


目を喪った少女の時にも、少し異端の生活臭がありましたが、今回は、むしろ「蟲を利用する」男が出てきます。
いや、彼だけじゃない。
起こる、奇妙な症状を奇跡として見せるという小さな小さな島のとある一族の話。
そこでその寄生主となるのは、彼の娘。


そして、その前後を見ていた少年は、医者づたいに蟲師であるギンコの紹介を受けます。少女を救いたいのだと。
てか、どうみてもあこやちゃんの身に起こっていたことは「超常自然」なんだからあんなに呆気に取られなくても。。。
「ムシ」の響きが悪いんかなぁ?
まあ、なんか弱っちそうだもんね。




ていうかですねぇ。
あの一族の陰謀がねぇ、なんかセコくてセコくてセコくて、そのくせ案外と被害レベルだけが深刻でいらいらいらいらいらいらいらいらいらしてましたよッ。
そんな小さな小さな小さな島で、ほとんど農産物も取れない農民たちから、日々の糧を奪い取って「陰謀」気取りだなんて片腹痛いわ!!
ていうか、わざわざ島に逃げ込んでなぁ。
多分、外で生きていきにくいなんらかのワケアリだったんでしょうね。


それが、あの島に生える昼顔の亜種に、寄生する奇妙な生物とその習性に気付いてそれを「奇跡」として演出することになった。


という流れも、それはそれでいじましいものがありますよ。
ものすごく哀しいほどに弱い。
けれどどこかで、その経緯を忘れて、搾取者でござい、と踏ん反り返って近親者を次から次へと使い回して、それを多分「非情な自分☆」とかって浸っていたのかと思うと、情けなくて情けなくて情けなくて。。。


悪事ってもっとこうなんていうかさぁ!
多分、ろくすっぽ頭を働かせることもなく、ただ単に、むしろ家畜みたいに島民に飼われてるだけの存在だったんだろうなぁ。


――支配っていうより寄生だろ? それって。




そいでもって、バレたらさくっと殺された辺りねぇ。
なんかもう涙も出ませんよ。
まあ、生かしておいても役に立たなさそうですけどもぉ。


(なんでこんなに、こーゆー回で、あきらかにメインとは違うところでエキサイトするか)(いや、ナギくんは好きですよ?)




いや、あこやちゃんの選択がいかん、というわけでもないです。
そんなことはやっぱり、経験していないのでわかるわけがありませんが、けれどねぇ、ナギくんのことを考えてくれたら嬉しかったようにも思うのですよね。
なんでとーちゃんのほうを選んでしまったかな。


ていうか、心の底からの満足なんて、必要かな?


というふうに、私なんかはどうしても思うのです。
美しい表現だったと思います、たった一日しかない寿命の蟲で、その寄生主にその時間を共有させるから、一日一日があんまりにも新しすぎて。
あんまりにも新鮮すぎて、なにも考えられない。
体も心もいっぱいで、ものすごく満たされているって。




やっぱり、彼女の他にも「その時間」を選んでしまう、他の村人たちなんてのもいるわけですけれども。
でもねぇ、蟲たちは、それを何度も経験なんてしてないよね?
それはあくまで別の個体でしかない。


人間だから、何度も何度も蟲の「一生」に付き合うわけですけれども、そーいう時間軸で死んでいくのならばともかく、何度もそれを体験したいってのは、なんていうのかなぁ。
欲深いという気がするのですよ。




私はナギくんのほうが好きです。
あこやちゃんにも、同情はするけれど、やっぱり、うん。どうしても。


「目の眩むような時間が待っているんだから」
という、あこやちゃんの絶望の言葉を、丸っきり同じ表現で、膨大な希望と言い換える、ヒトの身でしかないギンコの側の世界がどうしても好きですよ。


ナギくんは、それでもあこやちゃんの安寧を喜ぶんでしょうけれどもね。