『アパートの鍵貸します』

『アパートの鍵貸します』
監督:ビリー・ワイルダー
出演:ジャック・レモン/シャリー・マクレー


ものすごく要約すれば。
「アパートの鍵を上司に渡して」「ラブホテル替わりに使わせる」みたいな感じのお話しでございます。んでその見返りが出世。
もともと学生時代からわりと利用されがちだったらしく(たまにいるね)。


だったらとことん開き直ったらぁ! みたいな段階に達してたのでしょうか。
しかしチーズやらシャンパンまで用意してる辺りやりすぎっつーか。;
ごたごたと使われてしまうというか、強く出れさえすればどうにでもなると思い込まれていたのは無理もない気がします。
(病気でずたぼろになってても、失恋して傷心でも自分の遊びのほーが完全に優位だと思ってる辺り、、、あ、なんかマジでむかついてきた。)


まあ、悪意が中核といえば悪意が中核の話なのかもしれませんが。


ただ、海外モノの場合は苦手とかってあんまりないんですよねー、昔から。なんていうのかな、捉え方が違うというかなんというか、いやホラ、日本の場合、振り回される人が不幸であるための道具って感じであんまり笑わせてくんないじゃないですか。こんなにも理不尽な目にあっちゃってますー、可哀想なんですよー! という不幸主張というか。
(とても元気に不幸自慢されてるとたまにあたまいたい。)




あちらさんの場合、どー見ても我が侭言って振り回す相手のほうをしっかりがっちり描いてしまっているわけで、可哀想と同情する前にまず、振り回されてるほうの肩をぽんと叩いてやらねばというかなんというか(その辺日本人気質)。
まあ要するに、笑わせるって意図がないというのか。
単純にそういうのを作るのが難しいのか、いや、単にバラエティってのならそんなーにレベル低いってわけでもないんですが(海渡ってくるドラマと比べるとそもそも、それ以前に選別されているわけですが、それでも頂点の違いってのはあるわけじゃないっすか)、むしろ「笑い」とドラマを両立させるというところが苦手なのかもしれませんな。


正直、現代だと三谷幸喜さんくらいしか思いつかないしなぁ。
(昔の日本だともっと多かったと思うんだけど、ローカルっちゅうか今見ると全然笑えないというというか、名作ではあり続けても、別の生活母体があるヒトらにとっては「笑える」部分はないというか。)


いやつか、さすがに前置き長すぎる気もしますが(いつものことか)、今見てもにや、と笑えるというのはなかなかに稀有なことなんではないのかと思うんですよ。
やっぱり、主人公がわりと酷い目にあってても。
わりとしたたかっちゅーか、どっかでなんか奮起してくれそーに見えるってこともあるのかなぁ。




うんまあ、いっちょ前にエレベーター・ガールにときめいてみたりするわけですが。
実は彼女は上司の愛人であったという(評判を聞ーてあとから割り込んできた会社の中でもかなりお偉いさん、ある意味今までの上司ら合わせたよりも重要ー)、ただでさえ踏んだり蹴ったりなんですが、それを知ったのが、彼女が「どうやって調達された部屋なのか」ということもろくに知らんと睡眠薬を飲んで自殺をはかったところだったという。


踏んだり蹴ったり油ぶっかけられて燃やされたりって感じですか。


純情可憐で、男もろくに知らんだろーとぬくぬく浮かれてたら、どころか上司のお手付きだったという(不倫ってこと抜かさんでも相手が真面目だとすでに敵わない)(いや、ちゃんとした愛人として扱うという程度の意味ね)。


うんまあ、「離婚する」という言葉を信ずるのは女が馬鹿と思いますが。
クリスマスプレゼントすらまともに用意してないとか(しかし家族分はきちっとあったり)、今までの女遍歴をずらずらっと秘書に並べ立てられてしまうとか(手ぇつけたあとは秘書は換えるべきなんじゃないのか、つか、多少嫌味言われてもその後のフォローはどう考えても必要じゃなかろーか、妻に言われて離婚ってかなり当然の末路?)。




どう考えてもまともじゃないこの上司。
当時、大ヒットしていたファミリー・ドラマのお父さん役でもって、なんと映画の中でそのドラマとそっくり同じカットで、「不倫相手の自殺未遂」を告げられるという展開があったりなかったりという。


監督本気だな(わりと有名な監督さんっスよ)。
なにがどうかってわかりませんが、かなり本気ですね、なんかね。


まあ、お決まりの展開なんですよ、上司に逆らってこれ以上部屋を貸すのを拒んだレモンと(俳優名)、全然別の事情で離婚したとも知らず、自殺未遂までしたのにまだ好きで、ふらふらっと誘いに乗ってしまうエレベータ嬢と。
レモンさんも上司に逆らったから会社にいるわけにもいかず。
つーか、本当のことを言えなかったから(むしろ彼女の名誉のために)、女に自殺未遂されてしまったなんて近所でも思われて。


しかしまあ、彼女が来てくれたよっつー。w
大丈夫だよ、こんなに最初から酷いとこばっかり見てもそれでも好きなんだから、ちょっとやそっとじゃ壊れないよ。