『天保異聞 妖奇士』説二十三 印旛沼古堀筋御普請(いんばぬまふるほりすじごふしん) / 説二十四 後南朝幻想(ごなんちょうげんそう)

一言で言うと暗いよっていうかー。
アトルちゃんの事情が大変なのはわかりますしそれはしょうがないけれど、あと、あやしたちがその成立の仕方から社会の暗部を見ることになるのもわかりますけれど。だからってほとんど偶然みたくにアトルちゃんがこーいうコトに関わる必然性ってあるのかなと。
前のお侍さんの切腹の話はいいと思うんだよね。
どうして「行き会った」かがはっきりわかったから。


てか、これがユキさんだったら良いんだよ、主人公だから。
せめて宰蔵ちゃんだったらまだしもさ、あやしになった理由はともかくとして、後付けだろうがなんだろうが覚悟は済んでいるわけだ。


てか、彼女みたいな少女が、という意味ですらない。
でもだったらユキさんに対比さす存在にすべきだったんじゃねぇの。
なんでここで彼女が、という思いがどーにもこうにも拭えないんだよな。理屈が正しくないとかではないけれど、これは作られた物語りなんじゃねぇの? 彼女に起こった運命がそれだから受け入れなくてはならない、というわけには行かない。
だってたかだか作り物じゃねぇの。
実話が元だと、どんなに理不尽でも「なんでぇ?」とは思わないね。
好意がありゃあ、まあいいや、って思うのは不可能ではないけどさー、別に。実際許せないとかは全然ないけど、これを面白いと判断するのも無理なんだよね。余禄っていうかおまけっていうか、ぶっちゃけて余所事。
アトルちゃんは好きだけど、そういう問題じゃない。
好意があっても、それまでのラインからの行動から離れて見えたら好意が有効に働かないよ。記号だけで反応できる場合もあるけどもともとそこまでじゃないもんね。




とかまで言ってすみません。
ただ、アトルちゃんの感情の流れについてはわかんないでもないっていうか、この話は話として面白くは見れました。しかしなんというかー、事態が極端っていうか短期間に盛りだくさんっちゅーか、登場人物にやたら不幸とか襲い掛かると「しらっ」としません?
んでまた逆に、感情移入とかしてなければ、「不幸」自体を単に道具って認識するから平気なんだよねー。そこまでは冷めてはないんですよ、やっぱり。


少年が、妖怪が用水路工事の現場に出るのだ、と江戸にやってきました。


いつものごとくあやしらがそれを見つけ、そこに行く/行かないというような状況に別れてみました、なんというのか、あやしの組織成立に関わってる上役さんと、ばっちり対立してる、、、というか時々対立しまくっとる妖怪じじいが責任者なんですよ。
工事が失敗すると失脚するよーです。


しかしまあ、あんまりあやしの面子には差し迫ったどうこうという生活の心配がないというか(ユキさんは心配です)、社会正義としては少年やその同輩たちを救わなにゃならん、と現場に赴くこととなりましてぇ。




行ったら皆が妖怪だったよんと。
最初は妖怪が嘘だったんだそーですよ、工事辛いし農村に帰りたいしで、そしたらある日変な坊さんが来て、札を貼ったら水の妖怪になっちゃったよんと。


あまり深刻な事態に聞こえないのは、もともとそっち系のヒトらとも共存するよーな話を大量に読んできてるからなわけですが、この番組でその一線を越えた方らはまともな形では返ってこれない。ユキさんに、宰蔵ちゃんがぎりぎり、アトルちゃんがちょっとしたハンデ付きでなんとか現世に留まっているくらい。
彼らを救うことは出来ず、それを見た少年も札を飲んでしまいます。


さあ誰が悪い、という話になって。
妖怪じじいを責めようとしたアトルちゃんは、あやしの面々が止めてしまいます、工事自体は民のためになるらしーし実際。そのために権力的に危ない橋を渡ってますが、今度ばかりは私利私欲のためではないっぽいですよ。
まあ札を配ったヤツらは、いくら工事止めたかったにしても(そこは肯定なのかよ)もうちょっと手段選ばんかい、と責めてもいい気はしますがね。政治闘争なんて別にどっちが良いとか悪いとかじゃないじゃん、割れてるだけ。
どっちにしても犠牲が出るならね、とアトルちゃんだけが思えなかったよーで。


んで彼女は、なんとか戻ってきた一線をもう一度越えてしまいました。
流れはわかる、こうやって骨子だけ説明してても、ちゃんと筋は通ってると思います。展開がおかしいってこともないよね。


でもやっぱ乗れねっす。
実はこの番組、打ち切りくらっちゃってんで、この次の回で最終回なんですがユキさんがアトルちゃんに立ちはだかる形になれば納得が行くのかなぁ、とは期待しているんですが。
どっかしらでボタンを掛け違えた気がしてなりませぬ。
暗いっちゃあ暗かったんだけどね、「ちゃんとした」話ではあったんだけどね。
むしろ、もうちょっとこの面子の行き先を見たかったって気持ちあるんだけどなぁ。