『少林サッカー』

『少林サッカー』
監督:チャウ・シンチー
出演:チャウ・シンチーヴィッキー・チャオ
  /ウォン・ヤッフェイ/セシリア・チャン


半馬鹿よりも全馬鹿のほうが清々しいというのもあるんですが。
ここまで説明の類を吹っ飛ばされるとむしろちょっと解釈が難しいんじゃないだろうかと思わないでもなかったんですが、主人公のヒロインに対する心境の変化というものがあまりにも全く描写されてなかったんで。
打って変わって美形になったというところで心動かされていてもなんなら可。
そもそもその前も、よく見たら外見酷かったということに引いていても可。


なんというのか、映画のキャラクタというか。
作られた人物がそう「考える」というのを画像化するのはちょっと厭らしさがないでもないけれど、実際の人間ならそれはしょうがないような気もせんでもないんですよ。
それくらいは、というのかな?


んでも、だからと言って友情自体は壊れなかったし。
というか、手の平を返したように冷たくしたというわけでもなかったと。
(つーか、前半までのあれが友情表現だったというのはちょっと信じがたいんだがどうなんだろうか、本当にそこのところ。)
まあハッピーエンドだから別にいいです。
ヒロインが「努力」する気になったのは彼のおかげだしな。
当人同士が良いのならあとは気にするべきことではないというか、万一勘違いの馬鹿男が好きでも別にそれはそれでそういう趣味だからいいと思うんですよ。いや私はなにに一体拘っているんだろうなぁ。。。




というわけで、別のところに拘りすぎて忘れてましたが。
少林寺拳法でサッカーをするというような話です。


主人公たちは掛け値なしに優れた身体能力があるものの、それを道端で披露したところでただの大道芸人(よりも独り善がりで面白みに欠け若干邪魔)(誰がなにをやっていてもあんまり気にしないドライさが中国ではあるわけですが)。兄弟子たちもそれぞれの道で汲々としているわけなんですが。
特に主人公は少林寺拳法の素晴らしさを周囲に押し付けて廻るという切ない日々、自分の能力が通用しなくなってくる中年男性にもよく見られる傾向ですね。
(なんで唐突に現実を混ぜて語る。)
そんなことしても無意味なんだよなぁ、ますます世間と隔絶するばかり。


そしてある日、金に目が眩んで八百長試合をやったために(まあチームメイトに陥れられていたんだが、受けちゃった時点で自業自得とも言える)足を叩き折られて、サッカー界から追放されていた元選手と出会いまして。


サッカーの人気が羨ましくて目を血走らせて睨んでいたよーな気もしないでもないんですが、サッカーに少林寺を使えばいいんだ! という結論に至り。
それぞれの生活をしている兄弟子たちを集めたり、練習試合をしたり、と。
ところで、ラストのトーナメントの他チームの(このチームが妙なのは映画設定上、一応の経過が説明されているからいいとしても)ビックリ人間大集合ぶりを見るに、もっと前に主人公が思いついてても不思議はない気もするんですが。
まあ、門戸というかチャンスというか、接点がなかったんですかね。
思いつきで生きてるような感じの人生だったしな、主人公。




しかし、レビューを書くまでもなく、さすがになんとなく気付いてはいたんですが、彼らを取り巻く世界は極端化されているとはいえ、どっちかというとリアリティの類なのかしれないというのがなんとなく不思議というか。
特に、優れた肉体なんて道化にすらならないってのはなぁ。
プライドを捨て、芸を見せたところで誰も面白いとは思わない。


そして、「彼ら」がどうやって世間に認められていくか、どう心境が変化していくか、ということが、、、描かれてないんですよ、この映画。皆無。
(にゃ、惨めさに関してはきちっと描写されてましたが、うんうん。)
前提条件と結果がぽんと置いてあってそれだけ。
あとはまあ、サッカーで凄まじい技を披露しているか。
踊っているか、血みどろの喧嘩やサッカーの試合をしているか、意外と気を使ってるなー、と思ったのが主要登場キャラクタ(兄弟子+ヒロイン)の見せ場がきっちり全員分用意されていたところでしょうか。
そのためにどんなに展開が無軌道を極めても気にしない。


そこに気を使うのかそこかと小一時間(ry


なんというのか、作り手が「馬鹿」ではけして作れない、素晴らしいエンターテイメントだったような気がしないでもないです、はっきり言って展開に一ミリ足りとも隙がない、これはこれで一つの完璧なスタイルなんじゃないでしょうか。


私の場合、個人的には終ったあととても疲れたわけですが。
しかしなんというか、その一貫され徹底された姿勢には賛美を示していいものだと十分思います。ようしゃがなくてとてもいい(なにの真似かはっきりしなさい)。


しかしまあ、なんか容赦がないよなぁ。。。
でもそれでもハッピーエンドだからいいのかね、物質ハッピーでも。