『椿三十郎』

『椿三十郎』
監督:黒澤明
出演:三船敏郎仲代達矢
  /加山雄三


これの前篇的に『用心棒』があると聞ーてしまったぁ! と。
大変に面白かったです、余計なものがなーんにもないのな。


(九人組は九人揃ってやっと一人前な気がするので余計なものじゃない。w)


九人の若者たちが廃寺の中で、ごにゃごにゃと藩の中で行われているらしー不正のことと、これからの展望。幾人かの総評なんかを無邪気に言い散らしておりまたら(ありがちありがち)、なんかむくっとむくむくの熊さんが寝てたとこからもそもそ這い出てきて。


「馬鹿かおめーら」
とか言われました、なんせ相手の外見が帯刀してるとはいえ熊もどきなので、無礼者ー、とかゆーて済まそうとしたんですが若者たち(よく見ると知った顔が結構いるなァ)、この熊さん、口も頭もよく廻る。


いわく。
口で調子いいこと言ってる輩なんざ信用出来るかよと。


あと、不正だろーとなんだろうと、それはそれとして無謀な若者たちを止めなきゃなんないのになんで煽るかよと。
むしろ、馬面で若者どもをはぐらかしたおっちゃんのほーがよっぽど信頼出来るんじゃねーのかと。客観的に聞いてるだけのほうが、冷静に判断が出来るっつーのは話の後半でも別の人物によって繰り返されてますよね(あれはワロタw)。


あと、「わざわざと仲間に会いたいとか言ったら要注意」。


今までのところはともかくとして、最後のでさすがにそれがその通りだったので九人組は青くなりましたが「ここが約束の場所なんです、、、っ」。うわー、ヤベー、ということで外をこっそりと窺ってみましたら、マジその通り、十重二十重に囲まれてました。
っつーところで事態は逆に読めるわけです。




こっからすでに全面対決の構え、とゆー。
とどのつまりは冒頭の、正義側の若者九人と、どこぞの馬の骨の熊さんもどきの会話だけで話の前振りがさくっと終ってしまい、そこからはひたすら攻防戦。


(けど、証拠はないんだけどね。)


相手方が若者たちのリーダー格の叔父さん、そもそも最初に若者が相談していた人物を連れ去ってしまうわ、罪を着せようと自白させようとするわ、その妻と嫁を人質にしよーとするわと手段を選びません。
騒ぎを起こしてやろーとするも、彼を捉えたことを「疑いがある」と先回りで広めてしまうしてあちらもあちらでなかなかに頭がいい。


おまけに助け出した奥さんは菩薩さまで。
「人を斬ってはいけませんよー」だと。
相手が悪いことしてないってんじゃなくて、ある程度は事情も、それこそ自分らに向けられている殺意すらわかっているのにその上でそんな態度なんだよね。
それこそ、己の力と腕に自信のある椿さん(熊さんが名乗った)でもない限り、腹が立っても多少はしゃあないんじゃないだろうか。呑気というか、状況わかっとんのかいというか(わかってるんだけどね)。




彼女は「あの人は嘘の自白なんかしやしませんよ」とにこやかに言う。
見た目によらない鋭い切れ味の椿さんとの対比で、彼女の夫のことも人物としれ、さあさて、ならば時間は稼げることになる。相手もそれ以上は動けない。


若者九人組の規模もぎりぎりで知られていません。
血判状は、相手方に間抜けにものこのこ出向く前に叔父さんが破ってくれてたし、仲間と会うってのは椿さんが邪魔してくれたしね。
それに椿さんの異様なまでの剣の腕前のせーで、少々話が誇張(わざとそー仕向けたわけだが)されてしまっていたし。


なかなか全体的に上手い拮抗状態になっていたよーに思います。
相手方はなんといっても人数が多い。
(あと頭脳が一人、凄腕が一人ずつ。)
椿さんが潜入しよーとするも、若者たちの疑いやらその他諸々でぱーになってしまいましたり、しかしまあ、足を引っ張ってるとまではそんなに言わないけど(何回かはある)、ちっとも役に立たねぇよなぁ、こいつら。。。


あとは叔父さんの場所に関する、情報霍乱とか探り合戦とか。
なんやかやあっての一段落。
踏み込むための「椿の合図」にちょっとにやり、上手い。


馬面の叔父さんが救出されると、とっとと椿さん(偽名、つかその場で付けてた)は逃げ出してってしまいましたとさ。
(最後に果し合いさせられてたけど、確かにいらないよなー。)
(いや、プライドはプライドとしてわかんないでもないんだけどさ。)
健やかに育ちたまえよ、若者ども。つーかな。
こんだけ古い方だっつぅのに侮れねぇよなぁ、黒澤明、さっすが。