『東京タワー』

青年ふたりがごっちゃに...orz

『東京タワー』
監督:源孝志
出演:黒木瞳岡田准一
  /松本潤


ぎりぎりで悪くなかったってのはですね。


あの青年がねぇ、「高級な玩具」というのは紛れもなく本当じゃないのかと思うんですよ、そいでもって、こーゆー話って玩具が現実の中に突き落とされて終わり、じゃないですか。普通。
そうでなくても、玩具が勝つのだとしても、それは生身の人間になってからでしょう、おフランス(だっけ?)に絵画の勉強しに行っちゃってー、そこで同級生にも一目置かれるような存在にー、なんつぅそれはそれで別の物語りの主人公にシフトするなんていくらなんでも現実味がなさすぎじゃー!


見事な終始一貫なんすよね。
でもって、それを「けっ」と笑わなかったのは簡単なんスよ。


奥さんのほー、年上の女もね、要するにこれは、この人は「超高級な玩具」なんじゃないかと思ったからなんですよ。41歳なんだけど、男の玩具。
とてーも高価なんだけど、生身の人間じゃない。




玩具同士の恋なんじゃないかってー。
年齢がねー、21の男の子と、41の女の人と、どっちも奇麗で奇麗でお奇麗で、並んでても別段違和感ないし、生臭くないし。またこの人妻のほうも、その人妻っぷりまで全く生身らしいところがない。
笑えないですよ、そんなの。
しかも、別にリアリティがないってんじゃないの。
いるとこにはいるよね、というか。


黒木瞳岡田准一だぜぇ?


笑えないじゃん、いっくらなんでも笑えませんよ。
なに陶酔してやがんだこいつら、とか思っても、あーでもまあ、この人たちなら陶酔もありよねぇ、と納得してしまうだもん。


しかもさぁ、その陶酔も、その環境も、彼らにとって別にそれ自体が幸福じゃないってのがなんとなくわかるのだわ。すごく奇麗なんだけど、それって他の誰かにとってのアクセサリだったり飾りでしかなくて。
年齢が違っても。
立場が微妙に違っても、似た者同士が寄り添いあってるようにしか見えない。




ただひたすら高級な人妻が。
ひたすら母親に大事に大事にされてきた青年に。
(しかもひねたり拗ねたりしてないんだ。)


どっちかだけが描かれてたら、阿呆らしくて笑っちゃったと思う。夢見てろよって、なにやってやがんだって。でもこの話は、男も夢だったし、女も夢だったし、片方のカップルはどっちの夢も見事に破れてね。
片方は夢のまーんまで逃げ切っちゃったけど。
たまにはそんなこともあるんじゃないかとも思ったよ。


どっちも、なんだよね。
人妻が退屈な日常から救われてメデタシメデタシでも。
青年が人生の階段を一つ登りました、でも、全体に散りばめられた妙に「気取った」雰囲気が鼻についてならなかったと思う。




でもこの話は、なんか突き抜けてしまってて、それが美点に見えなかった。美しい容貌も、社会ステータスも、与えられたいろんなものが、当人に付随するアクセサリというよりも。
彼らを、その美点のために存在してる玩具に見せた。
どんなにどんなに美しくてもね。
それが彼らを幸せにする要因には見えなかった、彼らは物だった。


旦那が、妻を取り戻すのならば。
妻を人間扱いしなきゃならなかったけども、そうでなくて己の夢の中に押し戻そうとした。それじゃ勝てないよ、玩具としての素質なら、21歳の美貌の青年に勝てるわけがない。おまけに苦悩スキルまで持ってるぞ!
なんの社会ステータスがなくても、そもそも寄り添ってるだけで彼らは周囲から夢の中にいさせてもらえる。その年齢差も、邪魔にならない。
夢を助長させるだけ。美徳みたいにしか聞こえない。




私は憧れないよこんな生き方。
けれど馬鹿にしない、そういうふうにしか生きられない、そーいう生き物に見えたから。せめて、自分の手で選びたいって。
似た者同士の寄り添いを笑わない。


玩具が求められるだけの存在じゃないって話で。
同じ玩具同士を求めたっていいじゃんねぇ。
それでもこれから、彼らが苦労していって、少しずつギャップに途惑って、後悔して何度かは衝突しても、それでも死ぬくらいまでは続くかもしれない勘違いにも見えるからね。いいじゃん、夢は夢で。
多分これ、小説では読めないねぇ、笑っちゃうから。