『SHINOBI』

まあ仲間さんは奇麗だったが。

『SHINOBI』
監督:下山天
出演:仲間由紀恵オダギリジョー
  /黒谷友香


要するに、弦の介くんは朧ちゃんとの仲を貫きたいのならさー。
全部殺しちまえば良かったじゃん☆


みたいな話なんだと思うんですよね、多分そこ落とすと、なにをやってんだかわからない。だって、彼には里への執着なんてなかったし、己の生まれへの拘りもなかったし、権力もどーとも思ってなかった。
だって、彼には全て殺し尽くす力があるのだもの。
彼ってさあ、ホントに朧ちゃんにしか興味示さないし。
せいぜいが陽炎さんくらいねー、でも死ぬ寸前て感じ、あくまで自分になにかを与えてくれる存在としてしか認識しとらんかったのじゃないのかなと。


弦の介くんのことを朧ちゃんに「全部、押し付けちゃったね」という言い方をしていた人がいたんですけどね。
でもアレはそもそも、朧ちゃんの望みじゃないかしら。
隠れ里を彼が守ろうとするのならば、軍勢を殺す方向に行ったでしょう?
私はそーするのだとばっかり思ってた。
だって彼にはその力があるじゃないか。
そーして、権力敵に廻しても別に痛みは覚えないでしょう、なんとも思わない。
どうでもいいのだもの、下らないよ。




里同士は別れたまんまだよ、なんて口で言っておきながら。
そうならない未来をこっそり思い描いていたのは朧ちゃんだろう。
別に弦の介くんはどーでも良かったろう、彼が一番強かったから、父ちゃんはまだいたけどどうにでもなったから。里に興味なんかなかったろう。若かったからか、それとももともと根付かない性質だからか。
だから誰よりも強かったのか。


朧ちゃんの望みを写し取って。
気楽なことを言っていたけれど、本気だったろう。
そのくらい傲慢だったということだろう。


別に障害だなんて思ってもいなかった、彼の思い描く未来を阻んだのは、多分朧ちゃんだけで、彼女を納得さすのがなによりも難しくて。
なんでならばそれは、彼女がなにもかも望んでいたからだと思う。
んで、だから惚れたんだと思う。


空っぽみたいな、無責任でなんか軽い男だった、弦の介くんは。
朧ちゃんは奇麗ゴトしか言わなかった。
なにもかも自分で引き受けようとしたのは、それもやっぱり傲慢だ。




物語りはそれではいけないと思う人が見ているのではないか、高潔でなければならないのだと信じて見るんじゃないか、私はそうは見なかった。一番身勝手だったのが主人公たち二人だったんだと私は見た。
なにもかも捨てれば、愛くらいどうでもなった。
彼らの不在でどーこうなるような里でもないだろう。
実際、あれで主力が何人欠けたんだか知らない。


くーだらない、どうでもいいような権力ゲームを仕掛けられて、しかし「なんにも望んでいない」里の人間たちが生け贄のように差し出された。
敵対する二つの里同士で戦い合えと言われた。
馬鹿馬鹿しく見えたし、馬鹿馬鹿しく進行した。


そんなものすら捨てられなかったのが朧ちゃんだ。
戦いが必要なんだー、と喚く忍だか忍者だかもどーでも良かった、楽しそうに見えなかった。なんか辛そうに戦っていた、馬鹿馬鹿しい。
そんなところから繰り出された軍団を斬り尽したのが弦の介くんで。
己の身を傷付けてでも、理不尽に自分たちの能力を怖れて無造作に排除排斥しようとした相手に訴えかけたのが朧ちゃんだ。




一番愚かだったのは多分、朧ちゃんなんだと思う。


弦の介くんの力で全部「敵」をいくらでも殺し尽くして、幸せに暮らせばよかったんだと思う。でも、それはいつまでもいつまでも終わらなかったろう。
戦いが本当に心の底から、嫌だったのは朧ちゃんだけだったと思う。


あとの皆はなんかのためになら、それが下らなくても躊躇わず血を流したろう。一度も躊躇いを口にしなかった、運命を諦めるとしか言わなかった朧ちゃんだけしか本気でそれに抗おうとしてはいなかったろう。
弦の介くんは彼女の望みを叶えたんだなぁ、と。


「後悔したことがない」のは多分、「殺したことも含めて」だよね。
(すんません、映画本篇見てるよりコレ書いてるほうが楽しかった、、、っ、てそれを言ったら駄目じゃん。をーい。)