『ジョゼと虎と魚たち』
『ジョゼと虎と魚たち』
監督:犬童一心
出演:妻夫木聡/池脇千鶴
弱いなぁと。
下半身が全く動かない子の話、、、なんだろうけどそうじゃないんだよな。そもそも筋に、そーいうことが載ってないんですよね。
つーか実際に、テーマがそこじゃない。
足が長いとか早いとか、本が好きとか嫌いとか。
わりと自分でどー変えられるわけじゃないけれど(髪が長い短い、ということよりは拘束力はありそうだ)、特徴の一つでしかない。
ジュゼは下半身が動かない女の子で。
妻夫木くんが演じてるのが、なんか頭軽そーな大学生だ。
後半で社会人になっているか。
でも別に、悪い意味でそー言ってるわけじゃなくて、そーいう子だったからジョゼのお婆さんが「壊れモノ」「世間様に顔向けが出来ない」とまで言ってても、彼女のその身体障害は、「そーいうもの」なのでしかなくなったんだと思う。
それとも、成り下がった、というのかな。
ところでその男の子の名前忘れた。
ジョゼ、というのも彼女が読んでいる小説の主人公の名前だ。
ジョゼはどうもお婆さんに隠されて今まで生きてきたらしくて、学校にも行っていない。けれど近くのゴミ捨て場に出る本を片っ端から読んでいて、物は正直普通以上に知っているよーだ。
あと、なんでだか知らないがものすごく胆が据わっている。
もしかしたら生まれつきのものなのかもしれないし、それともそんな体で生まれてきてしまったからその埋め合わせなんだろうか。
彼らが出会ったのは一種の偶然で。
乳母車の中にジョゼを入れて、彼女のお婆さんが朝散歩しているところに、偶然に彼が行き会った(都市伝説のよーにして噂になっていた、そりゃそうだろうな;)。
好奇心なのか、お宝を積んでいるという頭の足りない噂のせいなのか。
何度か襲われたことがあって。
ジョゼが包丁を振り回して身を守ろうとしていたのだね。
で、人違いを彼女らが謝って。
それで朝ご飯をご馳走になったら、なんでか知らないがものすごく美味しくて、それを目当てに彼が通うようになってしまった。
彼女らがそんな図々しい彼を受け入れたのは結局。
なんだかんだと己らの境遇に、ほとんど反応らしい反応を示さない彼のことを拒絶するよーな気にはならなかったということなのかもしれない。同情は、浴びせられる側には辛いことがある。
突然の行動に驚くくらいのことはあるけど(足が動かないから生活スタイルがいろいろ違うんだね)、咎めることもしないし。
その態度も、別になにか考えがあって、ということですらない。
そこにジョゼとお婆さんがいて、彼女らがご飯が美味くて、なんの理由もなく危険な目に遭っては駄目だろうとそれだけのことで足を運ぶ(また襲ってやる、という言葉を聞ーてしまったりするわけだ)(別にそんな危険な相手を非難したりとか、そこまではしないんだけどね)。
出会って、彼は彼女が少しずつ気になって。
彼女にとっては多分生涯で、最初で最後のチャンスだった。
そんな話で、ジョゼの祖母の死をきっかけに結ばれて、ふいに時間の重みと世間との差に耐え切れなくなった彼が、それでも「耐えながら」少しだけ頑張って、それでも逃げ出したというのが全ての話で。
とても弱い話なんだと思う。
障害者さんの話っては、大抵がものすごく前向きで。
ものすごく誰よりも健全で。
ただなにもせず「王子様を待っている」なんてぇ女の子が描かれることなんてなかったんじゃないかと思う、私は見たことがない。
誰にでもある、そんな他愛ない望みがね。
彼ら彼女らにも宿りうるのだと認めることが出来るまでに、私はどうもかなり努力をしてしまった、もちろん、実際のそーいう人らが関っていた話じゃないんだろうけど。
本当に誰にでもある、弱さなんだろうし。
だから確かにどんな人にも子にもあってもいいんだろう。
別れることになってしまったけれど、それでも会えて良かったのだと。
ちょっと顔のいい、ちょっとだけ優しいフツーのにーちゃんなんだけれども(ちょっと頭軽いけどそこは間違いなく長所)、ジョゼにとっては人生そのもの。光だったんだと。
他愛ないありふれた、愛の話っつったらそーなるものなんだろう。