『アカルイミライ』

幻だったのかなぁ、、、には吹いたさ。

『アカルイミライ』
監督:黒沢清
出演:オダギリジョー浅野忠信
  /藤竜也


この世界を秤で測ろうとする人にとっては、これって本当に救いようのない、どーにもなんない話なんじゃないのかと思うんですよ。ミタニ? ミタニくんだっけ、オダギリ君の役名って。
で、浅野さんが浅野さんです。
え、まじー、とか思っちゃったけど、勘違いだとごめんなさい。
その場合、役名でなく俳優名でっ(開き直りも大概に)。


彼らはクリーニング工場で働いてまして。


いわゆるツレっつーか親友です。男の親友って仲いいよね。
フツーの兄弟程度に歳が離れてるのかな、実際、ミタニ君はかなり浅野くんに頼ってる雰囲気です。毒クラゲの水槽に手ぇ突っ込むのって止めて欲しいからだと思うの。
で、それが半ばわかっていても止めるわけです。
しかも本気でちょっと毎回焦るわけです、浅野くん。
そーいう仲ですね。
うん、かなりありふれた友人関係でないの。




それがいきなりぶっ壊れたのは。
さて、どこが引き金だったって言えるのかなぁ。
浅野くんのが多少社会適応能力がありまして、ちーと図々しいっつーか、若者ぶりたい雇い主が押し掛けてきても、案外ちゃんと話を聞いているんですが(お世辞だけじゃなかったと思うアレ)、なんでかミタニ君は追い詰められてしまう。


なんだろうね、アレ。
別にそんなーに、「酷い人」じゃなかったぜ。
醜いといえなくもないけど、そう言いきってしまうのもちょっとそれが酷いんでないのかと思う。部屋を飛び出して行ってしまい。
外にあった椅子のクッションにしがみ付いてしまう。


私はそこを引き金だとして見てみることにする。


いや、少しだけズレる。「どうしたんだよ?」と当然のことながら訝しがりながら、浅野くんがミタニ君を引き起こす。
さてこれが、、、どんな顔だったのか覚えていない。;
かなり驚いたのだという記憶しかない。


――うっわ、なんて顔してんだー?!


とまで叫んだのに記憶がナイ。そんな馬鹿な。
そっからなんでなのか、浅野くんがずるずると堕ちていく。毒クラゲに興味を示す雇い主を止めず、刺されるままにして。そのことを問い詰められたら(当り前だ;)、仕事をぷいと辞めてしまい。
そのことを恨みに思った(逆恨みじゃー)ミタニ君が、雇い主の家に行くと彼らが殺されていたりするのだ。
やったのは浅野くん。


効率悪いぜ、と映画を見終わってだいぶたってから思った。
ちげーよなぁ、そうじゃない。
んな、ちょっと無神経なオヤジを殺したところで世間がどーなるわけでもなく、ミタニ君が好転するわけでもなく。てゆか彼だってそんなに引き摺らないだろう。
ミタニ君が殺すほどに思いつめたのは、あくまでもアンタと引き離されることになったからでしかない、そこはむしろ自業自得だ。


全く、効率が悪いにもホドがあろうて。
画面は徐々に切り替わり、拘留やら浅野くんの自殺やらなんてゆー事態を経て(何故触れん)、浅野くんの替わりに浅野オヤジが出てきて。
なんだかミタニ君がふらふらと彼についていく。




浅野オヤジはミタニ君を叱りつけ。
助けを求めてきた時に抱き締めてやる、一回だけど。多分アレ生涯一回だとゆー気がするんだけど。


で。
繁殖した毒クラゲに、亡くした息子の面影を見る浅野オヤジに、「毒クラゲの駆除のニュース」を見せないよーにしたミタニ君というところで多分それが全ての回答。
やり方すげー、つたないけど、「思いやり」。
浅野連合の勝ち。


一人の、少し欠けているけれどわりと真っ当に生きることも出来たろー青年が人を殺し、己も死に、オヤジにまで役目受け継がせてそれで出た答えが、ミタニ君のちょっとの変質だとゆー。
どーにもなんない話です、コレ多分。
でもさー、そー思っちゃったら仕方がないよね。
己の人生より命より、友人に「そんな顔して欲しくない」とゆー気持ちのほうが強かったらホントどうにもなんないよね。損益で言うと無茶苦茶だとは思うけどさ、うん。
しかし、未来の話だと思うんだ案外これが。
でもまあホラ、そうとは思えないのも仕方がないよね。