『招かれざる客』

母子さん役、ホントに姪御さんだって。

『招かれざる客』
監督:スタンリー・クレイマー
出演:シドニー・ポアチエ/スペンサー・トレーシー
  /キャサリン・ヘップバーン/キャサリン・ホートン


黒人差別というと私は、郊外の木に吊り下がったタイヤを思い浮かべます。
まあ実はタイヤじゃないんですけれども。
火が付いていたこともあったよーな気もするんですけれども。
それが現実の風景なのか、それとも話で聞いただけなのかよく思い出せないまま、記憶をそのままにしています。


つーか、私にとっては差別って、人を木に吊り下げて燃やすことです。


22歳の娘さんがある日突然連れ帰ってきたのは。
38歳(だったかな?)、バツ一で妻子と死別した、出会って一週間の黒人男性でしたーというお話しです。それがほとんど全てです。
その人が、招かれざる・客、です。




でもって、結婚したいんだそーです。
客観的に見てとても大変です。
だって親子ほどではないにしても、一回り離れてて、娘さんも若干結婚には若くて(当時の適齢期知らないから標準かもしれないけど)、死別で列車事故だからまだしもだけど、再婚で、黒人さんてことを除いても所属社会は実際違いますやん。
そいでもって、8時間で結論を出せ、と両親は迫られるわけです。


数日で外国に飛んで、結婚式をしたいんだという。
ものすごく大変です。
はっきり言って、人種差別ってる場合ではありません。


でもね、そこで反対すると「黒人だからなのねッ」とか娘さんに言われてしまいそうなんですよ、いやいやいやいや待て待て、そこじゃねぇ。
またリベラルがどーとかかんとか。
娘さんのおとーさんは新聞社なんぞをやってて、差別反対運動なんかにも参加してたりもするんですよ、とても反対しにくいですな。


お父さんが躊躇うのが当然です。
しかしまた微妙に、その年齢であるからの社会ステータスや実績なんてのも持ってて、そもそも医者で国際組織に属してたりもして、評価も受けている。
なんていうまた、意地の悪ーい兼ね合いもある。
これが白人さんなら、どうかな、と私はちょっと思ってみたりします。
そこだけが違う、とどうかなとね。




そもそもとても好人物で誠実なんですが。
(金目当てという可能性などは皆無に等しいんですが。)
ちょっとやっぱり、焦っているのか言い方が皮肉なんですよねー。


いやそれも、両親が善人だとの前提に立ってなんですけどもね。
「反対したら止めます」
「私たちは今夜の飛行機で発ちます」
「娘さんは貴方たちをなによりも信じています」
一個ずつならいいんですけどもー、全部合わせると、反対すると悪人じゃんこれ。


つーか、おとーさんも選択権がない状況に追い込まれてるわけで怒るのももっともです、人種差別ってる場合じゃねぇ。
でも、全ての会話に、全ての展開にそれは含まれてもいるわけです。
なにも憎いわけじゃない。
実際、おとーさんにもおかあさんにも、「彼」自体を忌避するよーなところはなかったんではないかと思います、私の贔屓目かもしんないけど。




けれど差別は現実にあるものでもあります。
てゆかそもそも、一週間で決めるのもどーかと思うしそもそも。


しかしおとーさんは、そんなゆっくりと考えることも許されず、神父さんには「お前が本当に善人かどーか疑ってたぞー」とか言われてしまうし(友人ですご心配なく)。
おまけにアクシデントに近い形で、男のほーの両親も来るわけです。
彼と違って、ごく低い水準、平均的な黒人家庭のご夫婦。


そして、そこのとーちゃんは反対してるわ。
おかーさんには責められてしまうわ。


とても大変なんですよ、とーちゃんと花婿(候補)も思いっきりぶつかり合ってるしね。そもそもそっちにも伝えてないしさ。
(破談も、最初から覚悟していたのではないかと思いますなんだかんだと。)


娘さん側のおとーさんは、本当にすごく頑張ったと思います。
彼が受け入れなくても結婚はしてたかもしんないけど。
祝福があるのとないのとでは、多分その後の人生が全く違ったもんじゃないかと思えました、そのくらい頑張って全部を悩んで。
それで出した答えなので価値があるよーに見えるんでしょう、きっと。