『屋根裏の散歩者』

レズネタは誰へのサービスじゃ。

『屋根裏の散歩者』
監督:実相寺昭雄
出演:三上博史宮崎ますみ
  /加賀恵子


まあぶっちゃけますと、嶋田久作さんなんですよ。
明智小五郎が。
あの、ぼわーとした声で喋る、ASAさん曰く「犯人役でしょう」というまあもっともなんですが。なにを演ってもわりと怪演、という冠が付きそうな。ちなみに名前をきっちり覚えているのは純粋に存在感に敬意を評してです。


テレビの明智って、なんか皆あれですよね(映画は見たことナイ)、わりと美男子ばっかりですよね。コメンテタリーを見ていたら、違和感があるんですよー、と言っていたんですが(監督と脚本さんだっけ?)(プロデューサーかも)。
江戸川乱歩って美男子好きだと思うんだけどなァ。
あ、でも嶋田久作さんも好きそうだよね。なんか怪しくて。
そこで「いやー、犯人でしょう」と言われてしまったんですが、明智小五郎ってそーいうダーティ含みなイメージではないかと思うんですが。江戸川乱歩ってどっちかというと犯人、犯罪に心を奪われた作家に見える。




ああ、すみません、江戸川乱歩の小説が原作です。
原作に明智が出てたかどーか実は忘れました、とりあえず、それっぽい雰囲気の探偵は出ていたよーな気もしますが。


それとあと、実相寺監督はウルトラマン関係だそーです。
変な人だそーですよ。
でもなんか映像を見るようになってからその形容詞聞き飽きました、変てのは結局、己の趣味を多少前面に出しても許されるかどーかってことだけなんじゃないでしょうかひょっとして。
ヲタは皆ばらばらだからヲタなんすよ。


でもって、なんか無駄にエロかったです。
しかしなんつーか、うーん、真っ裸で気だるげに廊下(住人共有部)を歩かれても、それはあんまり嬉しくないよーな気もします。つか、あからさまに誰にでも「足を開く女の人」という感じなんですが。
「アタクシ、子どもは絶対に産みませんわ」なんてぇことを言っていても、なんていうのか。うーん。男に単に利用されてるようには見えなくて、そこは女優さんの色なのか構成なのかわかりませんが。
エロさは控え目だった気がします。


ひたすらヤってたらエロいってもんでもなくね?
いや、男のエロと女のエロってもちろん違いますけども、とりあえず女にとってのエロはないわけですやん明け透けで。んで男のエロって、馬鹿らしさが必要じゃないですか。
あの女性って、どんなに着崩してても隙がないんだもん。
虚無にして退廃。といった。




あー、まあ、全体的な雰囲気がソレだったので、シーンとして合わないわけではありませんでした。明智さん以外のほとんど全員(プラス、外から来た若い男)のところ廻ったんじゃないのかしら。


って、肝心の「散歩者」に触れてないしーっ?!


あ、女装趣味なんかもあったりする、まあでもわりと真っ当な。
まあ犯罪に心惹かれる江戸川乱歩の、明智小五郎の相似形の、しかし一歩踏み込んで闇に至ってしまった青年です。
「君ら似てるな」と言われてるよね、作中で。


茫洋としていて、絶望していて、犯罪に心惹かれるのも、なんかしらそこに真実めいたものがあるかもしれないなんてぇ、幼い期待をしているからかもしれないとも思えなくもない。
退廃の雰囲気は、十二分にありました。




ただ、ここまで書いていて思ったんですが。
屋根裏に上がって「初めて」違う、余所の住人の裏の顔が見えたよーには思えなかったんですよね。あの下宿全体が。
どことなく他人との空間共有を当り前にしている。
最初っからそんなだったわけじゃないですけど、まあ。
後半になるに従って、「散歩者」だけじゃなくてどの住人も、他の住人のことを軽く覗き込むだけで見ることになるよーな、それこそ、裸の女性が廊下をすたすた歩いていたりね。


そもそもさあ、主人公も別に、そんなふうに屋根裏に登らなくても、覗き見しなくてもなんとなく知ってたんじゃないのかしら。他の住人の顔。
昔ってそんなだったんだろーなー。


む、む。
私の読み方がそもそも間違っていたのかしら。原作の。
まあ、面白かったんじゃないかと思います、退廃の中に沈んで、退屈の余りなんの意図もなく「人を殺し」てしまう犯人も。
ふっ、と前触れなく消える明智小五郎も。
しかしどこまでも根がない。
うんまあ、そーいう話なんでしょうね、ソレを見つけられない、なにも青年だけじゃなくてそーいう時代の話。