ドラマ名探偵赤富士鷹(たかし)「ABC殺人事件〜昭和初期,アルファベット順に起きる連続殺人の謎とは?」
時々あんまり伊藤四郎さんが、旧友を好きすぎて困ってみたりしました。
うん、いくらなんでも忘れ形見の背中を見て、息をついて「お父さんにそっくりだ」はなんかやりすぎですよー。
まあ基本的にポアロとヘイスティングス(ポアロの助手さん)も、実際こんな年齢差でわりと近い関係だったので、良かったんですけどね。
むしろこっちのが自然だよなー。
んでも赤富士さん→如月父への感情には照れた。
とか思ってたんですけれども、ラストの語りにはぐっときました。
ああ。。。
伊藤四郎さんいいなぁ(役名と混ぜるな)。
アガサ・クリスティの代表探偵の一人、エルキュール・ポアロは。
とりあえず小柄で愉快なお髭のおっちゃんです。
カイゼル髭っていうんだっけかなぁ? なんかピン、としたあれ(俳優さんのイメージが強い人が多いかもしんないけど、原作からなの)。
伊藤四郎さんでおっけーです!
いや、外見イメージは違うかもしんないけど、いいじゃない、ていうか、日本であんな髭似合う人滅多にいないからいいじゃない(前に大河で見た、ピーターさんは鬼のように似合っていたが! by『北条時宗』)。
他人の恋愛ごとが大好きで。
若い人が大好きで。
意外と若い人間も彼を好きだったりするのですよ、キュートだし!
(中身だよ、中身。)
さすがに、小説と違って恋愛ごとに首を突っ込む尺はないものの。
なんとな〜く、あの、人間大好きなポアロさんぽくて良かった。
ディティールなんかじゃなくて、どちらかというとハート。中身ね。
伊藤四郎さんがほとんど普段のままの印象で。
あとはもう「昭和初期」のセットの中のよーなそんな造り。
あの若いにーちゃんも、刑事さんも(こりゃ、元が古臭い顔なんだよ)、多分私たちがぎりぎり受け入れられる美意識の中で、ぎりぎりまで野暮ったくしたよーな。w
大きなラジオ、小さな電車。
木で作られた街並み、石畳の階段。
掠れた声、甲高い喋り方でラジオ越しに語られるニュース。
古びたデザインの服は、けれどなんだか誰も彼も真新しい。
戦争のあとの傷痕は、登場人物の一人が口で語るだけであまり見えない。
母は、「夢の中の画像みたいね」というふうに評したりする。
そんな中で名探偵に挑戦状が突きつけられ。
予告連続殺人事件が起こる。
ABC殺人事件は、全ての事件を連ねる“動機”が一番重要で、それさえわかればなにもポアロさんのよーな頭脳を持っていなくても簡単に筋が読める。
乱暴に言い切っちまえば、この部分でもって構成された小説、ドラマなんてのも(様々な変更はあれど)結構あるんじゃなかろうか。
人間たちがどこか駒のように、お人形さんのように動く。
原作でもそーだ。
なんていうのか、ちょっとエキセントリックすぎる、私は当時のことを、戦後の日本のことなぞ知るわけがないから実際にこうだったのかもしれないが。
少なくとも私はそれを知らない。
そして、視聴者にはそんな人間のほうがよっぽど多いだろうし。
逆に、作り付けのようなセットと合わさったから、自然だったのかな。
利己的な事件が全て片付いて。
伊藤四郎さんが語る明るい話ばっかり書き続けたのだという旧友と、明るい話を持ってくるのだと彼が楽しみにしていたラジオのくだり。
ラジオが事件の中で使われていたので、嘆くその口調が好きでした。
なんか本当に愛おしそうじゃないですか。
人の想像力の生み出すものは本当に美しいのだというような。
(こういう人の存在は原作にはありませんね、他のクリスティ作品ということはありえないでもありませんが、とりたてて思い出すものもないかな?)
それがねー、事件に関り続ける名探偵の口から語られるってのがね。
悪意を知っているから、だから尚更美しいと思うということかな。