「彩雲国物語」欠けゆく白銀の砂時計

≪密林.com≫

一旦、短篇集を抜いて最新刊のこちらを先に。
(多分あとで修正ー。)


とにかく、ぐらっぐらと視点の揺れる話だし、この本なんか特にひどい。


かなりいきなり、趣旨が変わったように感じるのです、もちろん主人公・秀麗ちゃんの決意とかはそのままなんでしょう。
でもそれすら描かれ方が変わっている。
彼女が巻き込まれたはずの「恋愛」も形を変えた。
いや、それも表現を変えただけなんでしょう。
まだ、まだ私には理解しがたい部分が含まれているけれど。


うん。
お断りをしなきゃなんないのは男女関係の基本だよな。
「アレ」にゃ通じないんじゃないの→?
という意見ももっともだ、もっともなんですがそれは努力と根性と繰り返しでなんとか通じさせるのよっ、という切り返しも彼女らしい。




つか、そういう子なんだなと、なんとなく再確認。


茶州から、王都へと新年の表敬訪問の巻。
あー、トップの地位名忘れたorz
か、書いてない、、、えーと、前巻、お、あった州牧。
この地位名称って、そこそこ期間が限定されてるよーな気がするのに調べられないーー(三国志関係がごろごろ引っ掛かる;)、本格的に気になったわけではないしどうすっかな。


さて置いて。
暑い時期に書かれた冬の話って、どうもこう、どう頑張っても寒さ冷たさが欠けて見えるのはなんでだろう、もちろんこれに限らんとですが。w
それとも冬に読むとまた違って見えるのかなァ。
なんていうのか、忍び寄る寒さが視点から欠けているのですわ、それともそれについては、どっちかってぇと頑強な人が動き回ってるかかな。
微かに残る、足を悪くした人への思いやりではっと気付くという感じ。


どんなに言葉で繰り返し言われても、飢えのない話だ。
影月くんの話も正直好きになれないな。
(そして、別にそんなところにリアリティがあっても嬉しくない。)




うら寂れた土地ならばわかるのだが、ようやく土地に絡む因習を断ち切れたという直後の中で、「それ」というのはちょいと奇妙な気がする。荒れていたのだろう、それとも「10年」の間に問題は少なくなってきていたのか。
なんだか、巻のだいぶたくさんの部分でその辺りを懸命に説明されていたような気がしている。正直に、すぐに納得したわけではなかった。
前の巻までで、茶州へ感じていた違和感にも説明がなされた。
(私にじゃねぇよ。w)


ふむ? クーデターの気力すらなかったということかな(そこはまあわかる)。
しかし、姉弟の父親のエピソードは結構好きだ。
地位と家柄の使い方は、もともと上手い。地味だがな。w


こういうレーベルで、≪土地との呼応≫にページを避けなかった理由くらいはわかる。そこまで我が侭でも頭が足りないわけでもない。
だがやはり少し足りなかった。
そして、今の彼女が、4−5巻を書くとだいぶ面白いだろうと思う。


あと一番変わったのは「元公子」だろうか。
それを口にするのは無粋かな。期待している。


この話は、視点も視界も、物の捉え方も描き方もぐらぐら変わる。


設定はすっぽ抜けるが、人の物の捉え方はひどく印象(てか、それこそが小説を読むもっとも強い目的だったりするのだが。)に残る私にとっては。
まるでジェットコースターに乗っているかのようで大変だ。


前に口にしたことを、意図と変わったところを上手くいかなかったところを、評判が悪かったところを、なかったようにするように振舞う作家はたくさん見てきた、そういう人らに関しては大抵私は忘れた。
そういう話は、すぱっと切れるだけだし目眩なんかしない。
この話の変化を、言い訳と捉える読者は好悪ともに少なくはないだろう、実際その側面があるのだと思うどうしても。




作品としての評価とは微妙にズレているのかもしれない。


でも、この態度のほうが誠実なんだと思う。
どんなにみっともなくても。
だから、貴女の生んだ秀麗ちゃんのことをきっと笑えないのだ、薄っぺらく思えないのだろう、見苦しいのかもしれなくても。無茶でも。


個人的にこれは、奇妙に背筋の伸びる本だった。
努力というものをなんだかひどくひしひしと感じてしまったせいだ。
必ずしも、その登場人物らの行動や言動のせいなどではなく、そしてむしろ、作品の質自体は下げているかもしれないことによってだ。




君の「策」をとても楽しみにしているよ王サマ。