『千と千尋の神隠し』

誰のための物語りかなぁ?

『千と千尋の神隠し』
監督:宮崎駿
声優:柊瑠美入野自由
  /内藤剛志


この映画的ハイライトは、少女・千尋が風呂に来た、「汚れ神」さんをごーしごーし、強引に磨き上げちゃって体がどろどろに崩れ。
そっから本当に様々な物、自転車とか様々な家庭ごみなんかが飛び出してくるシーンなのではないかと思うんですが。
説明ないし、多分日本人と、せいぜい他数国の人にしかわかんないよね。
これ、現実の川ですね。
ヘドロと、自転車が突き刺さった川だ。


自然破壊駄目よーん。
というテーマが含まれているのだそうです、あーうん、『もののけ姫』はそんな感じだったな、ヒーローの味方が最大の破壊者だったけどよ(鉄鋼関係で滅んだ都市って少なくないんだよ)。


自転車はまだしも車が沈んでいるところもあります。
田舎モンを舐めんじゃねー、もはやあれは、自然破壊とかそーいうのとは別じゃー。
なんちゅーか、むしろ川汚れてるというか汚れすぎ、すごいよこれ!
という驚きが全面に出されているっていうか、、、そのシーンくらいしか自然破壊を象徴するところなんてないというか。


なんか宮崎さんの「テーマ」って今一歩で無邪気なんだよね。
まあそこがいいんだけどさ。




あと、千とカオナシ恋物語なのだそうです。
確かに。。。
ハクって顔は奇麗だけど、なんか登場シーン薄かったしなぁ、ていうか釣り合いが取れてないっていうか。うーん。
なんなら男女逆転でもいーよねこれ、いや、宮崎映画だとありえんけど。




千尋の両親がどっかの異界との端境にあるよーな山の、神さまなんかがわさわさ来るよーな妖しいお風呂屋さんの客用食料を食ってしまいー。
おかげで禁忌に触れて豚にされてしまいましたとさ。


というのは、日本人以外に話の意味わかるんだろうか。。。
いや、異界と食料ってのは世界共通のテーマか。


んでもって、両親を救い出すために釜場の蜘蛛じーさんの助言を受けて、風呂屋で働くことになりまして。
名前を取られ。
意外と八面六臂な活躍をしつつ。
ちょっと性質の悪い「カオナシ」なんてのにもべた惚れられたりしつつ(これの意味わかる人います? なんかの象徴なんだとは思うんだが)。
風呂屋のばーちゃんを騙し騙し、なんでかそこの子どもに懐かれたりしつつ。
ついでに最初に自分を助けてくれた、ハクっちゅー美少年が死に掛けていたのも助けつつ。


余計なことが全部結局役に立って両親が救い出せましたとさ、という超大筋。




しかし、やっぱりハクってヒロインだよな。
最初つんけんしてるけどそれはポーズで、実は誰よりも迷い込んでしまった千(千尋)のことを案じてるっちゅー。
そして、千は童話の少年みたいだ。
目的のために騙してもいい、後を案じたりしないで、信じたもののために突っ込んでいくのは、もともと少年の域の美徳だろう。


カオナシはそんな千の凛々しさに惚れて散々尽くしたというのにさ。
千は美形なヒロインのほうがいいんだよなーっ。
というお約束まで盛り沢山(嬉しくないから)。


ハクはこの際、カオナシを慰めるといいんではないかと思います。
思い出話の一個二個には付き合えるだろう、酒くらい一緒に呑んでやれ。




ところで「湯女」というのは性的従事者の意味なのだそーな。
言われてみればそーだな。
なんちゅーか、そこら辺も童話っぽいよね。
千もハクもらしくないけど、そー考えるとカオナシはなんかぴったり嵌まるね、だから金で千を購おうとして。それが破綻したから彼女を助けようとしたんだな。
最初から千と同じような囚われ人で、彼女を助けるための力も多少持っていたハクとはスタート地点が違う。


だからむしろ、観客にはカオナシが印象に残ったんだろうかね。
ハクには千を助ける充分すぎる理由も、見返りもあったけれど、カオナシは本当に愛だけなのだものね。