『突入せよ!「あさま山荘」事件』

まあ、主人公の俳優は反則だよなw

『突入せよ!「あさま山荘」事件』
監督:原田眞人
出演:役所広司椎名桔平
  /天海祐希


とりあえず、これを掛けている間ずーっと母と喧嘩をしてましたね。


つーか、NHKの番組でもそうだったんですが、この事件に関った警察側の犠牲者たちはずっと迫害に近いようなことを受けていて、周囲にそのことを隠しながら生きてきた、時代が変わってやっと、、、という話だったんですが。
(なのでいくらなんでも譲る気はなかったんですよね、どうでもいいっちゃいいんだけど。自分たちが差別側に廻るのって嫌じゃん。)


「だって、犠牲者出てないのに、この映画嘘付いてるじゃないの、、、」


という言葉を何時間もの末に引き出して、やっと明確に否定できました。
報道がそうだった、私は確かに聞いた、というのが母の根幹となる論拠だったんだと思います。だってマスコミが皆言ってるんだから事実、というのは、正直、間接的にでも政治に関ってる人から聞くのは好ましくないと思うんだけど。
歴史学者だったじい様の教育が全然効いてないんだから。;)
でも、母はこれでかなりマシなはずなんだよなぁ。
私さあ、結論に達するまでに悪魔だの異常者だのさんざん罵倒されましたよ...orz




これが「映画として」面白かったかというとよくわからず。
どちらかというと淡々とした事件処理モノ、2時間サスペンスのようなものであって、指揮やってたそこにいる誰よりも偉いくせに、全てを背負って前線にまで飛び出して行く佐々さんに価値を見出してもそれはフィクションではありふれているのですよ。
そして爽快な結末はさして期待できないんですよ。


だって一応は事実、実話を元にしているのだから。


途中のエピソードなどは正直誇張もあるのではないかと思うんですが、結末まで動かすわけにもいかないでしょう、機動隊側の被害を強調しようにもそれは機動隊の関係者すら傷つけるでしょう。だからやっぱり、この映画に価値を求めるのならば「現実」、この事件に対する一般その他の感情すらも含んで認識してくべきだと思ったんですよね。
ドキュメンタリーならすでにあるんですよね。
事態を記した本もある。


だから逆に、2時間のスペシャルドラマか映画の、テレビ放映という形が一番この話に相応しいのではないのかと思うんですよ。
そーして、私たち母子みたいな言い合いすらも。
もしかしたら正しい流れなのかもしれないと思わんでもないのです。
(母親を説得できる子どもがどれだけいるか知らないけどねー)(でもあと10年20年、届かなくても。)




私は糾弾をしたいわけじゃないんですよ。
つーか、その権利もない。


ただ、止めにゃならんことはこの世にあって、それは「目的」のために正当化できないということを信じてるだけなんですよ。私はウルトラマンが好きだけど、あれがフィクションじゃなかったら多分許さない。
そして、殺して終わりということをゆっくりとでも描いていかないのならば私は好きじゃない。
そうでなきゃ届かないものもあると思うんですよ。
現実を説明する言葉だけじゃ足りないから、フィクションの一部にそれを担って欲しいと思うんですよ。なんのためかは私にもわからないけども。


事件はシンプル、学生たちが民宿の奥方を人質に立て篭もります。


この話の中では、後藤田長官に送り出され(大臣だっけ?)。
どんなことがあっても引き下がるな、と言われた佐々さんが全ての状況を司ります。


そもそもこの少し前にデモ行進していた女性が死んだ事件というのがあり。
その責任は実際に警察側にあるわけですよ、なんの関係もない私がそんなことを否定したいわけがない、だから「あさま山荘事件は正しかった」、止めようとしたのは間違いだったというのが嫌なだけっす。


なんちゃーかでも、そういうことは映画は語らないんですよ。
やたらと格好いい佐々さんは(役所さんが演ずるのがズルいというのは同感だよ!!)、ひたすら目の前にあることを片付けようとするだけ、自分はちょっとタカ派だけどハト派の後藤田さんを生涯の上司と思ってて、とにかくその場の状況をどうにかしたいだけ。
偉い人間がー、と周囲から見られててもどこにでも行っちゃうし、髪振り乱して心配し、怒鳴り散らしてでも万全を期す彼に前線の男たちも少しずつ彼に信頼を寄せていくことになります。やっぱりそれは、特別な存在(ちょっと出世とかとは浮いてた)(んで後藤田さんがなんか超法規っぽい)だってこともあるけど、案外、なんていうのか「信念」というのもあるんじゃなかろうか。


とりあえずでもなんでも、自分が正しいと思ってないことをするのは辛い。
周囲の意見に逆らってなんて大変に決まってる。
世論は騒ぎ立てる悪魔だと異常者だと罵る、奥さんは心臓が弱い、学生はだんまり、近づいただけの人間も容赦なく撃ち殺す。
そこにことさらの正義って必要ないんだというそれだけの話だったんじゃないかしら。