「はだかの太陽」アイザック・アシモフ

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)

≪密林.com≫

前作の、ぎゅーっ、とひしめき合って人々が地球とは対照的に、人間同士が互いに何百メートルも離れて暮らし、夫婦以外は近づかないという星が舞台。
夫婦も、生殖行為の時だけなのですね。
人工授精が一般的になる前の話なので(古いよなー。)今だったら成立しにくい話なのかもしれないね。


こんな星で殺人が起こって、夫が殺されたらまあ十中八九犯人は妻でしょう。
ただ、計画殺人だとしたら疑われることがわかっていそうなものだし、そうでなくても現場に武器になりそうなものが一切ない。
ともなると少し話は別。
彼らはロボットに極端に依存して生活しているので、ロボットに身の回りのことを記憶されてしまうのですね、メモリは消去することは出来るけれど改ざんすることは不可能。
唯一、殺害現場にいたはずのロボットは、「人が死ぬところ」を見たショックでなのか電子頭脳がイカれてしまっていました。


アシモフの世界のロボットたちは、人間を基準に価値観が作られているので、どうもそういうところにはひどく敏感ですね。
R・ダニールでさえ、人が毒殺されかけたシーンを立体映像で見ただけで(ただしリアルタイム。)変調を起こしてたしなー。。。




んで、ベイリ&ダニールの3部作のその2でございます。
特殊な暮らし方をしている、惑星ソラリアで起こった殺人の調査。
なしてドームの外に出るのがやっとこさの、広所恐怖症(閉所恐怖症の逆、アシモフの造語らしひ。)の地球人の刑事が、はるばる宇宙にまで行かなきゃなんなかったのかは計り知れない。


なにも恒星を越えてまで「刑事」一匹を輸出しなくてもいいよね。;
(三作目でまた別の星に行った時はまあ、なんとか納得いったけどさ。)
まあ、ソラリアにはそもそも殺人の概念からしてないというのはわからないでもないんだけどね。
従って捜査機関も全っく存在しない。それもわかる。
まあいいか。




で。
ベイリは輸入野菜よろしく、消毒されてしまいましたとさ。
そもそもスペーサーらは、地球人の持つ病原体への免疫がないのでしょうがないのですが、ばい菌扱いは酷いよなぁ。。。
パートナーが来ると聞いていたら、ロボット・ダニールでした。
久しぶりです、懐かしいです。
もうちょっとくらい、状況を説明しやがれと思います。;
ベイリはダニールとしばらく暮らすそうなのです。
なんでも今回も、ロボットだということは秘密なのだそうです、前回と同じですね。


さて、被害者の妻のグレディアは、超絶美形でした。
立体映像越しに話すだけだしー、とのたまってえっらい薄着です。
(星がそもそもそういう風習ではあるようなのですが。)
頼みもしないのに一部ヌードまで見せるのはやりすぎです。


。。。
ダニール、なんか怒ってる?
気のせいとかじゃなく?
ええええぇぇぇぇ。;


なんで人間そっくりとはいえロボットに、自分が悪いわけではないことを謝ったり言い訳しなくてはならないのかとベイリさんも思いはするのですが。
ちくちくちくちく。
こういうのは理屈じゃあありませんな。
つーか、なんで怒られなくてはならんかより先に、「なんで怒るのか」を気にして欲しくないような気もしなくはないのですが、あー、いや、やっぱりいいです。。。


とにかく、ソラリアという星の風習もなにも、地球人は当然として他のスペーサーたちとも全然違っていて、ベイリにはやりにくいことこの上ない。
人々は行き交わない替わりに、生身としか見えない立体映像で話をします。


母体に受精後体内から取り出され、幼児期の頃は一緒に育てられますが。
だんだん引き離していくのだという英才教育。
英才教育ぅ?
なんか人同士が触れ合わないことに、えらい誇りを持っているので、聞いててベイリは面食らってます。
いや、別の常識がある人間だってこと、わかってはいるんですが。
違う生活の仕方をしている、というよりも、ソラリア人たちは別の星の人間が「遅れた文化」を持っているのだとしか捉えられない。
だんだん幼児同士が離れる時期が早まっているのです! と言われてもな。
知るか阿呆。
しかしアシモフさん、こういう民族固有の思い入れや思い込みをさらっと書くの上手いよなー。w




上でダニールがショックを受けたと書いた、遠隔の毒殺未遂などもありましたし。
グレディアとごたごたしたり、外に出たり。
太陽を見て卒倒したりなんてこともしたのですが。


ちゃんと事件は解決しましたよ。
もー、ネタバラシをしようにも事態がくるんくるんとこんがらがっていて、多分名前とか言ってもわかんないのではないかと思う。


そーそー。
話の中盤過ぎに、ベイリがね。
ふかふかのソファに埋もれてしまって、起き上がれないー、ともがいていたところでダニールに「手を貸してくれ」と言ったら、言われた彼がじーっと手を見下ろして「どうしたらいいのかな?」という顔をしていたシーンがちょっと好きです。
うん、すげぇダニールらしくなくて。
(なんかこやつ、なにもかもに隙がないのだ。;)


それが事件解決の糸口となりましたとさ。ほー。。。