「ユダヤ戦記(1」フラウィウス・ヨセフス

ユダヤ戦記〈1〉 (ちくま学芸文庫)

ユダヤ戦記〈1〉 (ちくま学芸文庫)

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全く知らない時代、というかこの辺の人物が全くわからないもので、かなりたってから出てきたカエサルを基点には置いてみたんですが、それにしたってローマの知識があるわけでもないし。;
しかしまあ、ヘロデって名前には聞き覚えがあるな。
(>『世界遺産』#485 マサダ(イスラエル)


そっかー、イエスさんの時代(直前)のこの人のご先祖かなぁ、と思ってたんですよ。そもそもユダヤ人じゃなくて外から来た人だし(でも当時のユダヤ王を直接殺したわけではないんだよ、あとで王位継承権のある人物を殺してたりしたけどな;)、それならそれで「新約聖書」ででも一言くらい触れられててもいいと思ったんだけど。。。


てか、ヘロデってまんまヘロデ大王かよ...orz


Wikipediaヘロデ大王




とにかくまあ、視野が狭いというかユダヤ人にしか目が行かないというか、いや民族の歴史書なんだからある程度は当然なんですが、てゆか交流がないのかこの民族は。;
(交易とか必要のなさそーな質素さではあるけども。)


記述自体は簡潔で(訳というよりは説明自体)、近い時代の己が民族がローマに負けた歴史を書くにしては感傷もなく、あっても逆に韜晦に近いっつー見事な冷静さだというのに、ただただ単純に事態と名称がわかりにくい。;
とりあえずカイサルの後継者(つまりローマ皇帝)のことを「カイサル」と呼ぶことがあるのは把握しましたが、つーかさすがにそこにはカッコ書きで注釈が入ってるんですが。親と子が同じ名前はざら、叔父と甥もまず普通(母親と娘もだな)、関係が近しい有力者が子どもにその名前をつけることもよくあるみたいです。。。


記述の中に、時々当人だけじゃなく、父親の名前とか出身地とかが名前に冠せられてるんですが全く納得。てか、そうされてもなんかよくわかりません。
敵と味方が一応民族違うんだけど同じ系統の名前だもんな...orz
(裏切りを何度も繰り返すという事情もあったりなかったり;)
(あと、ユダヤ人にとっては別の民族の人らが彼らのコミュニティに参加しよーとすることがあんまり珍しくなかったようです、結構厳しい審査はあるんだけど、審査があるって段階ですでに受け入れが想定されてるってことになるしね。)




まあなんというか、人物で必要そうなのは本気でこの巻ではヘロデ大王くらい。
紀元後直後になくなった、外からきた始めての王だけでしょうね。
この人は当時の王族と、うーん、なんかややこしいんですが、ヘロデとその兄とは、少なくとも利用するするされるってだけじゃないちゃんとした関係を築いていたみたいっす。ヘロデの兄は結局この時の王を庇う形で殺されてますし(このことがヘロデを王にするのに役にたったということなのかもね)。


むしろこの人は、ユダヤ王族の間ですでに恒常的に存在していた争いに、悪く言ってもせいぜい付け込んだくらいで王位が乗っ取られたのだとしたら、その原因はユダヤ人の側にあるといえるのではないのかと思います。
それに、身内、自分の子どもらにはかなり酷いこともしてますし、結果的に相当数が殺されていたりもしますが、ユダヤ人にとっては悪い王でもなかったようです(他民族から来て、自分の属していた民族に隷属させるよーなことは全くなくて、当人がそのままユダヤ王になっただけ)。


けれど、ユダヤ人たちは理屈ではない部分で彼を憎んでいたようです。


つーか、なんていうのかなぁ、ヘロデが台頭する紀元前までの間も、彼が死んで数代を経ても、延々延々と多かれ少なかれ緊張状態というか紛争状況が続いているわけなんですが、正直それがなんでなのかがちっともわからない。
当事者が死んで、次々と入れ替わるってこともありますが。
一つの争いを取り出してみたところで、さてそれが、権力欲や財産欲以上のものであるかっていうと怪しいという程度の理由しかなく、それならそれでいいんですがなんでそのたびにユダヤ人たちは頻々と事態に巻き込まれるのか。




そもそも彼らは≪ローマ≫を憎んでいたのかそうでもないのか。
憎んでいなかったというのならば、少なくとも、これほど争いが起こり続けることもなさそーな気もするし、憎んでいるというのならば逆に、しばしば争いの仲介や裁き、懇願を口にするのは図々しいという気もするのですよ。


英雄と言えるよーな人物は一人もいません。
華々しい戦闘の記録もないし、胸のすく活劇もない、敵も味方もいろんな意味でわかりづらく、はっきり言ってどちらに属す事態なのか全くわからず読み進めていったことも少なくはありませんでした。
しかし、陰険、というのすらなんかちょっと情けないというか。


とにかくややこしく、難しい民族だということだけは伝わってくる気はします。
(他にないともいう。)