「鋼鉄都市」アイザック・アシモフ

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

≪密林.com≫


だいぶ、ていうか本当に古い記憶になる、うわ、マジ10年だなぁ。
(30代弱の人間にはまだ10年て長いよー。)
なんで好きなのかは読んだヒトには言わなくてもわかる、ちゅーかわからんヒトには多分説明したところで感覚そのものからわかんないのかもしれないとも思う、私にとってちょっと特別な作者さんの本です。


このシリーズ(と設定を共有した別シリーズ。)の中では、いわゆるエイリアン/異星人は一切出てこない。
いるのは、ずっと昔に宇宙に飛び出して行ってしまったせいでしまいには身体能力も寿命も、もとの地球人から大きく隔たってしまったスペーサー/宇宙人と、彼らの使役する。彼らの生活の中心であるロボットたちだけ。


そして彼らが地球を離れている間に、地球のほうもだいぶ様変わりしていて、皆が皆、揃ってドームの中に閉じこもり(環境の悪化が原因だろうね)。
それがあんまり長くなったので、それが当り前になって外が怖い。
ロボットも嫌い。スペーサー憎いとやかましい。
一言で言うとコンプレックスの塊、集団引き篭もり。うるせぇ。


この本から3作の主人公を勤める刑事イライジャ・ベイリも、多少は柔軟なところはあるものの基本的にはそういう典型的な地球人。
そんな彼が、ある日上司からのお呼び出し。
あのねー、しばらくロボットと暮らしてくんないかなー、とのお達しです。
無理ですな。
地球人はすでにもう本能に近いところでロボットが好きではないし、ロボットの存在が象徴するスペーサーへの憎悪は、恵まれない者が恵まれた者へと向けるそれと同じ、本物です。


たとえベイリ自身が仕事だからと納得したとしても、周囲はそうもいかない。
皆寄り集まってるだけあって、隣人のことにはひどく敏感ですしね。


しかし友人でもある上司は、そこは大丈夫ー、と軽く請け負いやがります。
なんでかっちゅうと、R、、、ロボット・ダニール・オリヴォーは人間とそっくり同じ姿をしているのですわ。
彼は、そもそもダニールとベイリが一緒に行動しなくてはならない理由。
殺されてしまったスペーサーの代表者と瓜二つに造ってあったりします。


要はこのダニール、殺人事件の調査に、スペーサー側から派遣されたロボットなのですね。
地球人がイメージするスペーサーらしい、私らなんかでいうと「貴族的な外見」をしていた被害者を反映してるのか、非常に整った見目に、青銅色の髪がトレードマーク(なんかどんどん美形になってしまうみたいなんだけどね! マジで;)。


ついでにいうと、起動したてのぴよぴよヒヨコ。
見るものになんでも興味は示すわ、でもいまいち感情表現が平坦なので扱いにくいし、態度も丁寧なはずなのにどことなく不躾だしっ。
(ちなみに最後のはずーっと直りませんでしたな。w)


でもまあ、捜査はしなくてはなりません。
そこは刑事だから本職だしね。


スペーサーの居住地はそもそも地球人のほとんどが近づけない(皆、外に出れないからねぇ;)、被害者以外のスペーサーは進んで精神鑑定を受けていて「計画的な殺人はしない」という結果。
扉を開けさせた瞬間に撃たれた被害者を殺すには、確かに当て嵌まらなさそう。
少しだけ出入りしている地球人も同じ。


じゃあ、誰がスペーサーの代表を殺すことが出来たのだろう? という疑問に、地球の特殊な団体などの可能性が示唆されたりもするのですが、妙に曖昧。そもそも人員一人って少なすぎる。
(ダニールも正直かなりな足手まといだしなぁ。;)
どうもなんていうか。。。スペーサーの手前、一応でもなんでも捜査しなきゃいけないというだけのことらしい。




んで結果、ベイリはその人間そっくりのR・ダニールを連れて、あっちにぴよぴよ、こっちにぴよぴよ、街中をうろちょろするばっかり。
ダニールの言うことは妙で疲れるし、ロボット学者に会わせたらうきゃー! と大喜びされるし、しまいにゃ息子にはなんかダニールの正体がバレてるわ(なんでー?)、大変大変。


家族だの地球民族の誇りだの奥さんだの、上司だの、ごたごたごたごたした挙げ句に捜査を頼んできたスペーサーの博士には「実は犯人なんてわりとどうでもいいっしー。w」なんて言われてしまうしねぇ。
うむ。大変大変大変。;


ベイリはなんもかんも。
しょーもないことも実は自分を騙していたり裏切ったりしていた人間たちを全部許して、んでもっていっつも動じない変わらない(ロボットだからってだけじゃなくてダニールの“個性”なんじゃないかなぁ。。。)ダニールに友情を感じて、彼と一緒に肩を組んで部屋を出て行きましたとさ。w


これ、アシモフさんのスレッド(in 2ちゃんねる)で話していたことがあるのですが、多分「愛着」なんだろうなー、と思うんですよ。パソコンや車なんか人によっては顕著ですね。
あれが、やっぱりヒトと同じ姿をして、自立運動をするのだからもうちょっと強くなるのたとしてもね。
物への愛。


寂しいのですがアシモフ氏ってのはもともとそういう寄りの話を書きます。
けれど、、、まあ、それはあくまでこの時点での話。w
長いとも短いともいえる歳月が、その後も彼らの間には存在します。
私が彼ら、人間・ベイリとロボット・ダニールを好きなのかというと、ここから始まっての変化そのものなのかもしれないです。




ミステリとSFの融合の成功例として名高いんだけどさ。
正直私にとってはそっちはあんまり重要じゃないかもしれない。w