『スパイダーマン』

コスチュームは格好悪いのになー。

『スパイダーマン』
監督:サム・ライミ
出演:トビー・マグワイアウィレム・デフォー
  /キルスティン・ダンスト


うわー、清々しいまでに脚本勝ちじゃないですかコレ。
いや前から、面白いなぁとは思ってましたけど、それがなんでなのかはよくわからなかったんですよね。別に好きな俳優ってわけでもないし、まあヒロインさんはたまに可愛いなと思ったけど(でもなんか好きだから尚更って気もしたし)。


話はいくら金が掛かっててもヒーロー特撮だし、ステレオタイプだし。


「正義」はシンプルだし。
じゃあ翻って、「悪」に明確な意味があるかっちゅーとそれほどでもないし。
スパイダーマンの変身のメカニズムわかんないし。
SFとか言ったら鼻で笑いますけどもー。
これを面白いと言い切ることに恥ずかしさはありませんね。




なんていうのか、話に無駄な部分が一切ないんですよね。
時間の飛び方もシーンの切り替えも実にシンプル(時間の選び方もタイミングも)。
登場人物たちは、己の役割以外のことを一切口にしていない。
でもそれでステレオタイプ、物語りのための素材でしかないというふうには見えないのは、見せ方がわざとらしくないからじゃないかな、と思えるんですが。
誰かが、誰かの引き立て役のために存在してるわけじゃない。
脇の脇に至るまで、己の中の理由によってポカもやりますし、駄目な部分もあるというふうにちゃんと見える。


でもその替わりにスパイダーマンの「活躍」に関しては、そんな細やかな気遣いよりも、見栄えが優先されてるっちゅーかなんちゅーか。w
いやでも、シンプルで余計な説明がないからかもしれない。
画面の中のヒーローがいることに、理由はいりませんよ。いればいい。


だいたい、あんな蜘蛛の糸で移動する必要ないんですよ。
でも、そーやってくんないと詰まんないじゃないか。ww


そもそもが、変身することになった切っ掛けだって、「3種類に大別された蜘蛛全てのDNAを持った蜘蛛が作られて」「それが逃げ出して」「それが主人公を噛んだ」っちゅー。
うん、小説でいきなり読んだら放り投げますね、勢いよく。
画面だから許せるというか、あ、マンガでもありですね。
それでも、くだくだしく説明されてたら、やっぱりさっぱりと白けるというか、少なくともそこを面白がることは私には難しいと思います、絶対に無理とは言いませんが。
言いませんが、そんな話があったらむしろ即殿堂入り、永久保存級です。




「すーぱー蜘蛛」のDNAが人間の主人公の一部と入れ替わったっぽです。
お口で説明されてたら許せません。ええ許せません。


そーしたら、近視の目はよくなるわ(面白かった)、なんか薄っすらと体にお肉がついてるわ(ちょっとエロかった)、反射神経はよくなってるわ(わかってたさー)、糸が腕からひゅっ、と出てくるわ(なにサそれ)。
大変に前向き、ちゅーか。
ものすごく積極的にそれを活用して生きるっぽいです主人公。
疑問はないのですかと書いていて今思いましたが。
見てる時にさっぱりと気にならなかったし、今に至っても責めるつもりはないのでそんなことはいいのです。




覆面プロレスで勝ちーの。
おじさんに心配されー、の。


力が強くなったので行動パターンが変わり、今まで大人しかったのに喧嘩で相手をぶちのめすなんてことがあったんですが。
でも彼、自分が悪いわけじゃないから、つーか相手が仕掛けてきただけなので反省する気はないわけです。


「巨大な力には責任がある」


と言われても、ソレを飲み込めないんですよ若造だし。
やっぱり強いのは嬉しいじゃないですか。
そして、そうして受け入れられないままに、おじさんは強盗に殺されてしまったと。




ひどくシンプルな話です。
結局、本当に本当のヒーローは、その主人公の叔父さんだったんですね。
彼は強い力は持ってなかったけど、その覚悟があって、それがたまたま「力」を手に入れてしまった甥に、己が死んでも伝えることが出来た。


そーして、間違いも積み重ねるように生きていく主人公も。
その彼を、見た目や立場やそんなことじゃなくて、いつか本当に愛するヒロインも。
それだから好きになれたんたと思うんですよね。


そこにいる人を好きになれないと、話は大抵面白くないです。
もちろんそれだけじゃあないんでしょうけれど。でもやっぱりね。