世に蔓延れ、女の子。

昔、というほどでもない何年か前、ちょうど少年漫画の「封神演義」が流行っていた頃だったかな?


私の当時いたところは中国史の歴史全般の場所だったけれど、たまにその関係の話をすることもある、まあ基本的に、批判が多いんだけどさ。
大人げない集団なんだよ、ヲタってなぁ歴史嗜好でもそんなもんさ。


で、まあその漫画の中で、「昏君」……だったかなぁ?
これに現代中国語の振り仮名を付けてしまっているシーンがありましてね、フォンジュン? だったかなぁ、いやその辺はずぇんずぇん自信ない。
そりゃあおかしいだろう、と突っ込まれてて、まあ特に反論は出てませんでした。
だってさあ、中国語は5種類だったかの地方語があって、それによって単語の読みは違う。
挙げ句の果てに、時代によってちょくちょく変化。
しかも、紀元前数千年前が舞台の中の台詞でなぁ。
別に他の言葉が中国語ってわけでもなく、性格付けなんかもなんか現代日本人、日本語の駄洒落が頻出、なんてぇ漫画のどこにどう必然性があるかって言えばないだろう。


特に賛成してたわけでもなかったですけどね。
なんちゅーか、君主への「悪口」しかも叫び声でなくてはならない状態でね、さすがに中国モノで「バカ殿」でもあるまいしなぁ。
そのまま日本語に置き換えた「暗君」だとこれ、迫力がない。
形容詞に近い言葉なんですわね、例えば「人殺しー!」と叫ぶべきところで「殺人ー!」と叫んでるみたいなもので、状況説明になっちまいます。
まあ、それなりにそれなりに、苦悩の結果だったんでないかな、漫画家氏の。


今なら言わなくてもと取り成したでしょうが、当時はまあ、放っといた。


すると、滔々と誤りを語っていた男性がわしっ、と腕を掴まれ(比喩)。
「じゃあ、日本語読みの“あんくん”のままではどうでしょうか?!」
だとか若い感じの女性に詰め寄られていた(暗喩、しかし私にはそれが見えた;)のです、いや、礼儀正しかったですよ、彼女に敵意なんてのもかけらもなかったし。
個人的好みにより、彼女を女の子と呼びますが。


その、女の子の勢いに押され、(口数の多い人だった)彼はどんなに回りくどくそれを表現しようとも。
「……ま、まあ、いいんじゃないかな」
と答えていたのがまあこの思い出の顛末です、それ以降知らないしー。


だからどうしたよって、思われるだろうなぁ。
でも、面白かったんだよ、だって女の子の熱意の前に、細々とした知識を誇る皮肉さんな人格がころりと手もなく負けたってぇ話だもん。
「You winner!!」
と女の子に告げたところで、なんのことかもわかんないだろうが(w


それがだから、数年前の話。
覚えているのは、特殊な記憶力と、影で笑っていたという感情のせいだろう。
(感情を伴う記憶は他より忘れにくい。)


で、つい最近。
とある少女小説を読んでいたら「昏君」に≪ばかとの≫とルビが振ってありました。
架空の中華風の女の子がとても頑張る話で、がつんがつん主君に活入れてました。
うんうん。
「昏君」のほうはちょーっと浮いてるけど、それは私のほうの記憶のせいかもしんないし! ≪ばかとの≫のほうは私が見ても問題なし、違和感ないぞー。


そのシーンを私みたいに見ていただけかもしんないし、当人かもしんないし。
当人だったとしても覚えてるかどうかも怪しいけれど。
(そもそも完全に偶然だったらちと切ないんだが。)
とにかく頑張れ女の子。
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