『クリムゾン・リバー』

『クリムゾン・リバー』
監督:マチュー・カソビッツ
出演:ジャン・レノヴァンサン・カッセル
  /ナディア・ファレス


一言で言ってしまうと、ラストに向けてちんまり縮まっていくとゆーか。


だーっと広げた風呂敷を、最終的にちまちまちまちまたたんでいくよーな作りといっても、多分批判にも避難にもならんのと違うのかしら。


とりあえず、雪山のものすっごい高い場所に、目玉を繰り抜かれた死体。


そいでもってその時に同時に、「墓場に強盗・小学校に墓場荒らし」が入ったりしてたりするんですよ、いや実際登場人物がこー言ってんだもん。
あと、ニーマンス警部は(なんで名前を覚えた;)犬が嫌いです。
犬嫌いの設定は、ラスト近くまでしつこく引き摺られました、まー、確かに生体実験にも(大学とかの単位じゃなく、素人が、だと)雪山にも犬は実際付き物だと思いますが。なんでそんな微笑ましさを強調するしかない属性を付けたのかの部分が謎ですね。




それと、殺人事件を担当するニーマンス警部と同時進行の(あとで絡む)ほーの小事件を追ってるこれは、刑事? でも威張ってた気もするけど、まあそっちの若いにーちゃんの顔はドーベルマンにちょっと似てると思います。
(だからなんだ。;)


死体の正体はとある大きな大学の職員。
(つぅか、丸ごと一つ都市が入ってるよーなマンモス校。)
というかこの話は主に、周囲から自分たちを隔絶して、「純血種の優れた人種」を作り出そーとしてる大学研究機関とその周辺の村を描いた映画といえるのかもしれません。
主人公はあくまで大学の環境。
せいぜいそれに適うのは、彼らの偉ぶった自意識くらいか。


しかし、それを直接人物を通して描くということはほとんどされず(会話の端々に覗かせてはいるんだけど登場時間すら少ないのさ)、とにかく周囲の地域っから話を煮詰めていくといった感じでしょうか。
優れた能力を持つ人間同士の掛け合わせや。
ナチスを思わせるような「純血」への拘り、近親相姦による異常児の出産に。
なぜかここ数代、それが減り。


近くの村で病気の子どもたちが大量に現れるよーになったという事実。


誰が聞いても「なにが行われているか」という部分は簡単に察しが付くものの、さて、じゃあ最初の死体との、小学校と墓場を襲った犯人の意図ともつながりがわからない。
犬系にーちゃんの捜査にて、とりあえずそのターゲットは一人の少女であったことがわかりました。ダンプに撥ねられて原型を止めないほどに崩れ、腕一本だけを残して亡くなったという少女と。
そこに居合わせて、悪魔の仕業だというよーになってしまったお母さん。
彼女は修道院の中でずっと一部屋に閉じこもり、人と会わない誓いを立てていました。




さあ、ここまでで事態を解明しなさいっつったら、多分可能だと思うんですわ。
いや具体的な犯人はわからんけど(多分半分も書いてない)(けど、そこはあんまり重要でもないんだ、どーゆうわけか;)、ベクトルはわかるんじゃないだろうか。
具体的な行為がどうとか以上に、驕った人間性を裁くという話、なのかもしれない。


しかし私、映画見てる時にはぶっちゃけ無理でした、なんていったらいいのかなー、余計な雑音が多いというか、なにが重要でなにが特に気にしないでもいいかというような振り分けがろくに出来ないんですよ。
殺人事件を担当してないほーの刑事廻りがとにかくコミカルというか。
かなり無意味に街の若者たちとの乱闘シーンが挿入されてたりするわけですよ。。。
ねぇ、なんでそうも露骨に格闘ゲーム風アレンジの演出がされてんの...orz


死体の第一発見者である、若い登山家女性とニーマンス警部の淡い淡い、ロマンス以前の交流もあったりなかったりしたんですが。




やっぱりこの映画は、自意識が作り上げた罪と。
それがほとんどろくにらしい理屈もなしに崩れていく様、ただの人間の恨みとか許せないっていう感情ごときのもので壊されてしまうのがメインなよーな気がするんですよね。


近隣にいて、多少以上の(私程度ですら充分、素人医学でって意味だ)知識があれば気付かれるよーな、本当に本気になれば立証もそんなに難しくない「犯罪」を隠すために、なんでそこまでの大仰なことになってしまったのかといえば。
それはやっぱり、周囲をまるで考えない搾取者としての。
支配者としての振る舞いと感覚のせーだったような気もしないでもない。


それを崩すのは、なんの力もない親娘だったというのは確かに皮肉です。


が、その構造をわかりやすく伝える展開になっていたかというとかなり謎。
つーか判明した連続殺人事件(連続したんだけどこれもわりとどうでもいい)自体はちゃっちいぞー、マジ薄いぞー、真相が判明するのも偶然のみだぞー。


閉鎖都市とそれに似つかわしいどろっとした殺人と。
からーっとした明快な事件解決を掛け合わせてる時点でなんかそれ違うから。