「誰の死体?」ドロシー・L・セイヤーズ

誰の死体? (創元推理文庫)

誰の死体? (創元推理文庫)

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ずいぶん前に読んだ時、面白いと感じることが出来なかったんですよ。
まあ、なんというか、、、ほぼ読んだ瞬間に「トリック」が判明してしまったからなんじゃないかと思います。これねー、前に森博嗣氏に「トリックをわかってしまったほうが負け」てな言われ方をしていた話があるんですが(非常に非現実的な仕掛けではあるんだけど、ミステリとしては定番なんだわね)。
まあそんな感じだったのかなー。


いや別に、定番のネタってわけじゃあないんですよ。


ただ、私みたいに「死体の処理」から考えていくとほとんど一瞬で解けるというか、もともと犯罪者寄りでミステリ読むからなぁ。や、珍しいってほどではなくて、わりと作中の名探偵の中なんかにも犯人の視点に近いからこそ謎が解けるっつー人らもおりますし。




ネタバレになりかねないかなー、と思いましたが。上の。
これ読んでわかる人は読まなくてもわかる気もするのでそのままにします。


むしろ今回、二度目に読んだ時に「あー、前もここで展開が読めたんだよなぁ;」なんて思いまで抱えておきながら、案外と楽しく読めたってのは逆に不思議。
前の時と違って、わりと素直に主人公の心の動きを追えたからかなぁ。
つーか、前は回転の遅い話って苦手だったんですよね、わりと。小説だからもちろんスピードは可変なんですけれど、それでも不純物は混ざる。
主人公の思考の筋道自体を不純物として捉えてたら面白くないか、さすがに...orz


この辺、ここ一年で映像を趣味に加えたことが関係しているのかもしれませんね。
受け付けないものもまだありますけども、相手の(画像の)スピードに合わせるってことはどうしても必要だからなぁ。




まあもともとこのシリーズ、青年貴族が売りだったりするんですよ。
作者さん自身がなんか途中からのぼせてたんじゃないかって揶揄られたりもしてるらしいんですが(よく知らない)、それのどこが悪いっ、と解説の人が開き直ってました。ハイ、代わりに。
(この主人公・ピーター卿にモデルがいるらしいって関係もあるんだけどね。)


私は先代公妃さま(ピーター卿のお母様ww)が好きです。
活躍するのは少し先かなー、と思ってたらこの巻もなんのなんの。w


あとは、常に丁寧で遜っているくらいなのに、言うべきことはきっちり言っている誰よりもピーター卿の信頼篤い執事さんとか。
別の事件で(未記述)馬が合って親友になったパーカー警部。
あんましピーター卿の贅沢に慣れちゃいけませんぜ。w




この事件では、とある人の良い教会関係者だったっけ?
の風呂場に唐突に現れた「素っ裸に鼻眼鏡を掛けた死体」。


それとほぼ同時に起こった、ユダヤ人の実業家の失踪事件、この後者をパーカー警部が、死体のほうを先代公妃さまに頼まれて(バザーだなんだで縁があったらしいよ)、ピーター卿が相談に乗っていたりしたわけですよ。


とりあえず決定しているのはそれが別人だということと。
見付かった死体もユダヤ人で、背格好やらなんやらが似てたという点だけ。
(しかし実業家は死んでいるのか生きているのかわからない。)
(最後は自分の足で真夜中に出て行ったらしい、というところまで。)




ちなみに、私が事件のあらましがわかったのがここまでのデータでです。
むしろもっと情報が増えてくると「誰が犯人なのか」というところがわからない。
ピーター卿も、カラクリがわかったあと、警察の調査力がないものでちょっと証拠堅めに苦慮してましたね(彼の場合は、社会的地位のある顔見知りが犯人ではないのかとその時点で気付いてしまっていたもので慎重になりました)。
これ警察が可能性に気付いてたら速攻解決してたよなぁ。
いや、犯人の立場からしてそれもないか。。。


まあもしかすると、前はそれでも探偵側から話を見て。
「うーん、なんで気付かないんだ」


なんてことを考えていたのが、今回はわりと犯人の側、死体の処理を第一に考えて、という観点に移ってたのが印象の違いなのかもしれません。確かに完全につながりを消すのって意外と難しいな。
死体の処理方法は、日常生活の中からふっと沸き出たようで良かったんですけどね。
その後の細々とした工作とか、隠蔽工作なんかから足が付いた感じでした。


いやなにを私は、犯罪サイドから延々と語ってるんだ。;
つーか、どうすればバレなかったかを画策してどうする...orz


まー、完璧主義者だったから人殺しから逃れらんなくて、完璧主義者だったからそっからバレた、なんてのは普通の意味でもちょっと悲しいかもしれませんね。


あと、「犯人候補者」さんたちがなんか皆良かった。w
いやいやいや、最後に犯人じゃなかったことを褒めるパーティにピーター卿が招いてますよ、なんだそりゃ。わはは。