「ハリー・ポッターと賢者の石」

ハリー・ポッターと賢者の石 (1)

ハリー・ポッターと賢者の石 (1)

≪密林.com≫

大学時代のある日、たかだか200円のバス代を170円にするためだったかそれとも40分間下山しよーとしていたんだかは忘れましたが友人と帰ってました時。
「梟好き?」
と唐突に聞かれました。
「うん、わりと」
「あのねー、梟のたくさん出てくる映画が今やってるんだけどー」


「いくらなんでもハリーポッターくらいは知っとるわー!」


そんな大学時代でしたとさ。
そんなに長くなかったとはいえ、一種の社会現象と化してた時代だったつーのに。
いやでも、今でも流行りものとか、2ちゃんにでも行かないと疎いがね。ハリーポッターは単純に数年前から知る人ぞ知るって感じで囁かれてたけどな。
ただ、高校時代に『ナルニア国ものがたり』読んで以来、若干ファンタジー駄目でなぁ。
かなり好きだっただけに終わりがな、、、どうもなorz
いや、今ならわかるんだけどな、作者どのの気持ちも。




つーか、ファンタジー・ブームの火付け役でしょうな。
まあ欧米では『指輪物語』が地位高いらしくて、教養だとされてるっぽいけど(一気にヲタ好みまで行っちゃうのが日本のいいところっつーかまぁ、なんだ)。
だって大学で授業があるし、専門学者もいるし。


んで、この作品を読んだ時に感じたのは、“うわー、懐かしい”でした。
その時にはまだそれがなんなのかまではわかんなかったんですが、イギリス特有の空気なんですね、私が読んだのは「秘密のクローディア」とか「ふたりのロッテ」とか。
(空で打ったのでタイトルの間違えあるかも。)
どっかしら閉塞された空間で、どうにもならん子どもっつーか。
厳格であるがゆえに、そこからはみ出る犠牲者っつーか。
イギリス好きの人がいたら、多分そこのところを語って下さるんでしょうね、寄宿舎モノなんてのもいくつか見たな。


ローリング女史ってのは、確か私よりは年上ですが、私の年齢にはそれら児童文学はもう古典の扱いに足を突っ込んでいたような気もしますし(でも同年代も結構読んでるはずですけどね)、同じような。
いや、少なくとも同じ土壌に育まれた本を読んで育ってこられたんでしょう。




ハリー・ポッターは、普通の少年なのだと思うのですよ。


まあだって、私の読んできた話は、皆、無力な子どもたちだったからです。
虚栄心もあって、周囲への絶望があって、どうにもならないことと、それに対して自分がなんの力もないことを理解していて。
少し賢いからそれがわかって諦めて、少し賢いからそこから逃げ出したくたくなってしまうのですよね。


教えられもしてないのにさっさか空飛ぶし、生まれたすぐの頃に、凶悪な魔法使い(だっけ?)を撃退してるけどね。
精神が普通の子だなー、と思うし。
ローリング女史はそこを一番書きたいんだなぁと思うし。




つんけんしているけれど、心根の優しい真面目なハーマイオニー
誰よりも健全な家庭で育ったロン。
ちょい影が薄いし、ほとんど“冒険”には関らないんだけれど、どこかで常に気に掛けられているネビル・ロングボトム。
(彼がなにか成すと、全員で心から喜べるような子な。w)


特殊な生まれ方をして、そこから細やかな心遣いによって丁寧に引き離され、結果ほとんど愛情を受けずに、けれどその聡明さから、けして捻くれることなく生きてきた、ハリー・ポッター
とかね。
誇張とかそんなんなしに、このまんまそこらにいるよね。この子たち。


魔法学校なんて、特殊な環境のよーに見えても、別段それが大事なんではないのかなぁ、と思うのですよ。
なんでこの子を、魔王(あまりに簡略しすぎだ;)との戦いなんてのに放り込んじゃったのかって部分は知らんのですけれども。
この子がすごく可愛い、ての(2巻末の作者氏の言葉)疑うつもりはないですよ。
それこそ、自分の子の次に挙げてるんですけれどね。わかります。なんか。
上手いことは説明出来ないんですが。


この子自身の、心向きというか、頑張りというか。
同じ歳の友人たちの手助け以外のことで、むやみに“大人”がなにか与えることで、安易になにかを得るってことが全くないからです。
この子の、努力の分だけ。
もしくは振って湧いたよーな大役も栄光も、それに見合うちゃんとした苦労と、周囲との軋轢なしではけして当人のものにはならないんですよね。


それがどれほど、子どもに(多分大人にとっても)いいことなのかは計り知れません。努力すれば叶う。それ以外の、安っぽい方法じゃ駄目。
努力にしても、ちゃんと周囲を見なきゃ駄目。独り善がりじゃ意味がない。
それに勝る経験て、ちょっと存在しないんじゃないでしょうか。
それでもたまに失敗をしながら、それでも誰かに手を差し伸べてもらって、逆に手を出し返すこともあって、ちゃんと道に戻ってくる。




そーいう話なんだと読んでいます。単に。私はですが。